鈴鹿で続くHondaとYAMAHAの10年——2026年、新たな対決へ

夏の鈴鹿サーキットで毎年開催される「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(通称・鈴鹿8耐)の季節が、今年もやってくる。
2人または3人のライダーが交代しながら、真夏の鈴鹿サーキットを8時間走り続けるレースだ。これまで数多くのドラマが生まれてきたが、直近10年を語るうえで欠かせないのが「HondaとYAMAHAの対決」である。

YAMAHAが塗り替えた勢力図——4連覇の衝撃

2015年、鈴鹿8耐の勢力図は大きく変わった。
長らく地元・鈴鹿で王者の座にあったHondaに対し、YAMAHAが完全新設計のマシン「YZF-R1」を投入。さらにメーカー直轄のチーム「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」を復活させ、本気の体制で参戦してきた。
エースは全日本ロードレース選手権の王者・中須賀克行。そこに世界最高峰のMotoGP™ライダーを組み合わせた布陣は、鈴鹿で速さを見せつけた。

結果、YAMAHAは2015年から2018年まで鈴鹿8耐を4連覇

Hondaのホームコースで、YAMAHAが4年連続で表彰台の中央に立つことになった。

速さだけじゃない。「燃費」と「戦略」で勝ったYAMAHA

当時のYZF-R1の強みは、しなやかなハンドリング、優れた燃費、そしてライダーの疲労を抑えるパッケージングにあった。これにより、8時間という長丁場を高いペースで走り続けることが可能になった。
象徴的だったのが2015年のピットインのタイミングだ。ライバル勢が25周でガソリン補給のためピットに入るのに対し、YAMAHAは28周目まで引っ張った。3周分長く走れるということは、給油やタイヤ交換の回数を減らせるということ。耐久レースでは、これは大きなアドバンテージとなる。
しかも、この高燃費はマシン性能だけで実現したものではない。ライダーの取り組みも大きかった。
たとえば、コース上でクラッシュが発生し「セーフティカー(SC)」が導入されている時間。コース全体がスローダウンを強いられる時間帯だが、MotoGP™ライダーのブラッドリー・スミスは、このゆっくり走る区間でもずっと身体をマシンに伏せていた。空気抵抗を減らし、燃料消費を抑えるためだ。
予選で速いラップを刻めることは、ライダー自身がよく知っている。それでも目標は勝つことだ。速さを見せたい気持ちを抑え、優勝を確実にする作業を淡々とこなす。その積み重ねが、4連覇につながった。

Hondaも食い下がったが、トラブルや不運に見舞われ、あと一歩のところで勝てない年が続いた。

静寂の2年間——Hondaの逆襲が始まる

2019年の開催後、新型コロナウイルスの影響により、2年間の開催中止が続いた。この期間、Hondaは静かに体制を立て直していた。
王座奪還を目指し、Hondaはメーカー直轄のワークスチーム「Team HRC」を再結成。マシン「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」を徹底的に開発した。
そして3年ぶりに開催された2022年、Hondaの体制づくりが結果として表れる。
高橋巧、長島哲太らを擁するTeam HRCは、予選から他を寄せ付けない速さを見せ、決勝でも安定したレース運びでポール・トゥ・ウィン(=予選1位から決勝も1位でゴールする勝ち方)を飾った。
 

以降、Hondaは再び連覇を重ね、現在4連覇中。

今年もMotoGP™ライダー、ヨハン・ザルコの参戦が決定しており、5連覇を狙う体制を整えている。

同じ4気筒、異なる思想——2大メーカーの個性がぶつかる

現在の鈴鹿8耐は、「壊れないバイクが勝つ」という時代ではない。
予選ではスプリントレース並みのタイムを記録し、決勝でも8時間ほぼ休むことなく、予選に近いペースで走り続ける。マシンもライダーも、高い水準で戦い続けることが求められる。
HondaのCBR1000RR-R FIREBLADE SPと、YAMAHAのYZF-R1。同じ「直列4気筒エンジン」を積みながら、その設計思想は異なる。
  • Honda:パワーと車体剛性を重視し、コースを力強く攻める
  • YAMAHA:ライダーとマシンの一体感を磨き、コーナリングスピードを高める
この特性の違いが、鈴鹿の複合コーナーや長いストレートで表れ、レースの見どころとなっている。

2026年、対決の続きへ

直近10年の鈴鹿8耐は、この2大メーカーによる対決の歴史でもあった。YAMAHAが新時代を切り開き、Hondaが奪い返す。その繰り返しのなかで、マシン性能もライダーのレベルも向上してきた。
7月上旬に開催される今年の鈴鹿8耐。連覇中のHondaに、YAMAHAがどう挑むのか。あるいは、Hondaがその挑戦を退け、連覇を伸ばすのか。
両メーカーが積み重ねてきた10年の歴史を踏まえて見ると、2026年の鈴鹿8耐はより深く楽しめるはずだ。

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