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The heroic episode of Kevin Vol.4

"コカ・コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第12回大会

2度のトラブルで、ピットロードで頭をかかえるシュワンツ

2度のトラブルで、ピットロードで頭をかかえるシュワンツ

表彰台に届きそうで届かない。シュワンツは運にも完全に見離されていた。

表彰台に届きそうで届かない。シュワンツは運にも完全に見離されていた。

この年のヨシムラマシンのカラーリングは左右非対称になっていた。

この年のヨシムラマシンのカラーリングは左右非対称になっていた。

※このコンテンツは、2013年に鈴鹿8耐サイトで公開された内容です。
バックストレートからマシンを押して戻ったシュワンツ
しかしその執念は実らなかった

1989年の鈴鹿8耐。1987年そして1988年にヤマハに連覇されているだけに、Hondaにとっては優勝が至上命題となっていた。そのHondaは、ワイン・ガードナーとミック・ドゥーハンのいるエースチーム。対するヤマハは前年の勝者ウェイン・レイニーとケビン・マギー、平忠彦とジョン・コシンスキーの2枚看板。そしてヨシムラスズキは、ケビン・シュワンツとダグ・ポーレンをメインチームとして送り込んだ。シュワンツにとっては、永遠のライバルであるレイニーが、前年に鈴鹿8耐を制しており、こちらもやはり負けられない戦いとなったのである。

ポールポジションはガードナー。土曜日に天候が崩れたために、金曜日にマークした2分16秒705がポールポジションタイムとなった。対するレイニーも2分16秒に入れるが、0.05秒及ばずに予選2番手となり、予選3番手にポーレンが名前を連ねた。

決勝レースは大波乱となった。スタートで多重クラッシュが発生するも、オフィシャルの迅速な対応でレースは止まることなく進行。スタートライダーを務めるドゥーハンは、見る間に後続を引き離して独走体制を固めていく。対する2番手にはレイニーが上がり、さらに3番手にポーレンとなったが、そのポーレンはタイヤ選択が合わずに15周目に予定外のピットインで前後タイヤを交換、順位を落としてしまう。

1回目の通常ピットインを終え、トップはガードナー、2番手はマギー。そして平とドミニク・サロンが3番手争いをしていたとこに、シュワンツが追いつくと一気に2台をパスして3番手に浮上する。

2回目、そして3回目の通常ピットイン後、ペースの上がらないガードナーにマギーが襲いかかる。しかし、ガードナーに仕掛けた84周目のデグナーカーブでマギーがオーバーラン。さらにマギーのマシンはその後にオイルを吹き、ピットまで戻るものの、そのままリタイアとなった。

さらにその後、3番手を走行していたシュワンツに不運が襲う。なんとバックストレートでマシンを押しているシュワンツの姿がモニターに映し出されたのだ。下り坂となっているピットロードを、マシンに跨がって惰性で下りてくるシュワンツ。昨年の鈴鹿8耐では、ヤマハの中須賀克行が130R付近で転倒。その中須賀は「ボロボロのマシンを見て、終わったと思った。でも、自分が大きな怪我をしていないことがわかったら、気がついたらマシンを押していたんだ」。175kg以上の耐久マシン。しかもフロント周りが大破していたら、その押す力は並大抵のものではない。これまで多くのライダーが、止まってしまったマシンをピットまで押して戻ったが、シュワンツもまた、その一人となってしまったのだ。

スタートから5時間が経過しようとしていた頃、今度はトップを快走していたドゥーハンが転倒。これでアレックス・ビエラ/ドミニク・サロン、平/コシンスキーのトップ争いとなり、なんと3番手の宮崎祥司/大島正にシュワンツが迫り始めたのだ。だが、またしてもシュワンツはガス欠を起こして、今度は途中で止まることはなかったが、スローダウンでのピットインを余儀なくされてしまった。

この後、コシンスキーはマシントラブルのためにレースを終える。これでトップのビエラ/サロンは安泰かと思われたが、このチームにもマフラーのトラブルが発生。マフラー交換に約2分を要するが、トップのままレースに復帰すると久々に耐久チームが優勝を遂げた。また、2位には宮崎/大島が入り、3位の可能性が残されていたシュワンツ/ポーレンは、さらにマシントラブルが襲い8位でレースを終えることになった。なお、この年のヨシムラマシンのカラーリングは、片側がヨシムラ、片側がスズキと、左右異なっており話題を集めていた。

そしてこの後にシュワンツは1992年に鈴鹿8耐に出場するが、この時はリタイアしており、ついにシュワンツの鈴鹿8耐制覇は実現せずに終わってしまった。

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