雨のなか始まった“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第41回大会決勝。Kawasaki Team GREENレオン・ハスラムがホールショットを奪うが、Red Bull Honda with 日本郵便の高橋巧がすぐにトップに立ち、後続を引き離して行く。
一方、スタートでややフロントタイヤを浮かせたYAMAHA FACTORY RACING TEAMマイケル・ファン・デル・マークは、4周目にヨシムラスズキMOTULレーシングのシルバン・ギュントーリに先行を許して4番手にポジションダウン。その後雨は止み、スタートから約30分で路面は乾き、各チームはタイヤ交換のため続々とピットインを行う。16周目にハスラムはジョナサン・レイへ、ファン・デル・マークはタイヤ交換のみでそのままピットアウトしていく。対して高橋巧は18周目まで引っ張ってタイヤ交換。ライダーは高橋巧のままでピットアウトするが、この間にレイとファン・デル・マークに先行を許してしまった。
その後、レイとファン・デル・マークはスーパーバイク世界選手権さながらのスプリントバトルを展開。30周目の第1コーナーでファン・デル・マークがトップに立てば、最終シケインではレイが抜き返すなどレースファンにとっては至福の時となった。
スタートから約1時間30分後、ファン・デル・マークはアレックス・ローズに交替。同じくレイはハスラムへと交替した。だが、その後にヘアピンで転倒したマシンが炎上。これでセーフティーカーが入りレイ、ファン・デル・マーク、高橋巧の差が急激に縮まった。だが、レイはその後にガス欠症状が出て、ピットに戻るまでに時間を擁してしまった。
16時過ぎに再び雨が降り始め、トップが128周を終えた頃にデグナーカーブで水野涼が転倒。これで2回目のセーフティーカーが入ったが、このタイミングでKawasaki Team GREENはトップ2に大きく水をあけられてしまう。また、セーフティーカーが解除される直前のホームストレートで三原壮紫が転倒。さらに最終コーナーでの武田雄一の転倒によりセーフティーカーの介入は延長されてしまうが、そこから雨脚が更に強まっていく。
これでRed Bull Honda with 日本郵便はピットに入りレインタイヤを装着してパトリック・ジェイコブセンが出走。そしてYAMAHA FACTORY RACING TEAMもピットインしてレインタイヤを装着、だがスリックタイヤのまま走行を続けたKawasaki Team GREENのレイはスプーンカーブで転倒してしまう。
午後5時にセーフティーカーが解除されるが、その僅か数分後にバックストレートに流れたオイル処理のため再びセーフティーカーが介入。
午後6時前、ようやくレースは再スタートとなり、YAMAHA FACTORY RACING TEAMとRed Bull Honda with 日本郵便がトップ争いを展開。そして徐々にRed Bull Honda with 日本郵便を引き離したYAMAHA FACTORY RACING TEAMがチェッカーを受け4連覇を達成。前日の走行で転倒して怪我をした中須賀克行の走行はなかったが、単独での最多連覇記録となる4連覇を達成。さらにファン・デル・マークとともに最多優勝記録で2位タイとなる4勝目となった。
表彰式
レース序盤トップ争い
優勝したYAMAHA FACTORY RACING TEAM ピット作業
2位 Red Bull Honda with 日本郵便 高橋巧の走り
土曜日のTOP10トライアルが台風6号の影響でコースコンディション不良のために中止。これで金曜日の予選結果がスターティンググリッドとなった。
7月28日(日)、晴天の下で午前11時30分に鈴鹿8耐第42回大会の幕が上がる。ホールショットを奪ったのは#95 S-PULSE DREAM RACING.IAIのブラッドリー・レイだった。しかし、すぐにF.C.C. TSR Honda Franceのジョシュ・フックがトップに立ち、続いて#12 YOSHIMURA SUZUKI MOTUL RACINGのシルバン・ギュントーリが首位の座を奪う。だが、スタートから約25分、200Rでの転倒マシン回収のためにセーフティーカーが介入。約13分の隊列走行となったが、リスタート後に#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAMの中須賀克行が2位に浮上し、さらに#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8hのレオン・ハスラムが中須賀をパスして2番手の座を奪う。だが、中須賀はすぐにハスラムを抜き返してギュントーリを追い詰めると、スタートから約1時間経過のところでギュントーリをパスしてスパートをかける。
この中須賀を逃すまいと#33 Red Bull Hondaの高橋巧もスパート。ギュントーリをかわすとトップ中須賀に迫っていく。
その後、中須賀が予定通りにピットインしアレックス・ローズに交替する。対するハスラムは32周まで引っ張ってピットインしてジョナサン・レイと交替。高橋巧は33周まで引っ張り、燃費の良さをアピールする形となった。
戦いは#33 Red Bull Hondaのステファン・ブラドル、#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8hのレイ、#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAMのローズへと移行。ペースの速いローズが42周目にブラドルをパスしてトップに立つのだが、このローズがピットインする直前にレイがトップに立った。
その後、ピットインのタイミングでトップが入れ替わったが、高橋巧がリードを広げ、ブラドルの走行時に、ハスラムとレイ、中須賀とローズそしてマイケル・ファン・デル・マークがその差を詰めるというのがレース前半の展開で、Honda、Kawasaki、YAMAHAの3ファクトリーがトップ争いをしている。
なお、#10Kawasaski Racing Team Suzuka 8hのトプラック・ラズガットリオグル、#33Red Bull Hondaの清成龍一は、前半戦では一度も走行をしていない。また、世界耐久選手権で2連覇を狙うF.C.C. TSR Honda Franceは4番手を走行。ポイントリーダー#11TEAM SRC KAWASAKI FRANCEは16番手。ランキング2位のSuzuki Endurance Racing Teamは11番手を走行している。
15時30分にレースの折り返しを迎えた時点で、トップはKawasaki Racing Team Suzuka 8h、2番手にYAMAHA FACTORY RACING TEAM、そして3番手がRed Bull Hondaと、3ファクトリーの僅差でのトップ争いが続く。後半戦に入り最初にKawasaki Racing Team Suzuka 8hがピットインを行い、レオン・ハスラムがコースイン。翌周にはYAMAHA FACTORY RACING TEAMがピットインを行いアレックス・ローズに交替するが、Red Bull Hondaは燃費のよさを生かして3ファクトリーの中では最後にピットインして高橋巧に交替する。この時点で、トップに立ったハスラムと、2番手のローズとの間には8秒の差、ローズと高橋の間には4秒弱の差があったのだが、高橋がハイペースでの周回を続け、130Rでローズをパスすると、S字コーナーでバックマーカーの集団に行く手を阻まれたハスラムを高橋とローズが相次いでパスし形勢逆転。トップは高橋、2番手にローズ、3番手にハスラムとなる。
そのハスラムがジョナサン・レイに交替すると、今度はレイが圧巻の走りを披露することに。ローズから交替したファン・デル・マークを130Rで抜くと、立て続けに交替したばかりのステファン・ブラドルをデグナーカーブで抜いてトップに立つ。後半戦は高橋が乗れば高橋がトップに立ち、レイが走ればレイがトップに立つという展開となり、YAMAHA FACTORY RACING TEAMは徐々に離されてしまう。レースも残り1時間となった時点でトップは高橋だったが、ハスラムからレイに代わるとファステストラップを更新しながら高橋を猛追。その高橋は残り45分となった時にタイヤ交換と給油は行うものの、ライダー交代はせずに2スティント連続走行を敢行しレイとの勝負となる。しかし、200周目に2分06秒805のレース中のベストラップタイムを記録したレイの走りは圧倒的であり、次の周の1コーナーで高橋をパスしてトップに立つ。その後、スプーンカーブから雨が降り始めレッドクロス旗が提示され、2番手を走る高橋のペースが大きく乱れてしまう中、今度はローズがS字コーナーで高橋を抜いて2番手に上がるが、トップのレイには届かない。これで26年ぶりのカワサキの優勝かと思われたのだが、SERTのマシンが1コーナーでエンジンブローを起こしたことが波乱の引き金となった。
最終ラップのS字コーナーでトップを走るレイが転倒してしまい、その直後に赤旗が提示されレースは終了。当初発表された暫定結果では転倒したレイは5分以内にピットに戻ることができなかったために順位認定されず、暫定結果に基づきYAMAHA FACTORY RACING TEAMの優勝として表彰式が行われた。
しかし、この暫定結果に対してKawasaki Racing Team Suzuka 8hから抗議が出され、『赤旗提示の1周前の順位を結果として採用する』という規則に則りKawasaki Racing Team Suzuka 8hが優勝となり、2位はYAMAHA FACTORY RACING TEAM、3位がRed Bull Hondaとなった。また、2018-2019年FIM世界耐久選手権シリーズチャンピオンは12位でチェッカーを受けたTEAM SRC KAWASAKI FRANCEとなった。
優勝したKawasaki Racing Team Suzuka 8h
レース中盤のバトル
優勝したKawasaki Racing Team Suzuka 8h ジョナサン・レイの走り
2位のYAMAHA FACTORY RACING TEAM ピット作業
新型コロナウイルスの影響で2020・2021年と2年連続で開催が無く、第43回大会は2022年に開催された。
8月7日(日)午前11時30分、ル・マン式スタートで幕を開けた3年ぶりの鈴鹿8耐は4番手スタートの#5 F.C.C. TSR Honda Franceがホールショット。以下、ポールポジションからスタートの#33 Team HRC、2番手スタートの#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hと続き、予選3番手の#7 YARTはエンジンがかからずに大きく出遅れてしまう。逆に予選で低迷し22番手スタートとなった#1 Yoshimura SERT Motulが7番手まで順位を上げる。
2周目にセーフティーカーが導入され、18分後に8周目からレースが再開された。このタイミングでYoshimuraがトップに浮上したものの、すぐにKawasaki Racing Teamがトップを奪い、HRCも2番手に上げる。そしてスタートで順位を落としたものの、猛烈な追い上げを見せたYARTが15周目には3位まで順位を回復。序盤はこの3チームによるトップ争いが繰り広げられた。
その後トップに浮上したHRCは、2位Kawasaki Racing Teamとの差を広げながら走行。Kawasaki Racing Teamは転倒を喫する場面もあったが、大きくロスすることなく2位をキープしていた。
ちょうど半分の4時間が経過した時点でもHRCがトップをキープ。以下Kawasaki Racing Team、Yoshimura、YART、#104 TOHO Racing、#95 S-PULSE DREAM RACING – ITECと続いた。
レース後半に入っても、HRCの高橋巧、長島哲太、イケル・レクオーナの速さに衰えはない。
Kawasaki Racing Team、YART、Yoshimuraが2番手を争うが、とくにYARTとYoshimuraはピットインのタイミングで順位を入れ替わる僅差の戦いを続けていた。
レースが残り1時間半となった時、スプーンカーブでYARTが他車と接触して転倒。すぐにピットに戻りマシン修復にかかるも、表彰台争いからは脱落となった。
残り1時間10分、Kawasaki Racing Teamはアンカーのレオン・ハスラムに交代。その約2分後、全チームを周回遅れにしていたHRCは、高橋巧からアンカーの長島哲太に交代した。ナイトセッションでも長島の速さは衰えず、2分8秒台を記録するなど驚異的な走りを見せ、HRCが214周を走破してHondaにとって実に8年ぶりの鈴鹿8耐優勝となるチェッカーを受けた。
トップ争い
チェッカーを目指し懸命に走るライダーたち
トップでチェッカーを受ける長島哲太
Hondaが8年ぶりの王者奪還
2023年8月6日(日)11時30分、2023 FIM世界耐久ロードレース 第3戦"コカ・コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第44回大会の決勝レースが、完全なドライコンディションのもと、ル・マン式スタートで幕を開けた。5番グリッドの#12 Yoshimura SERT Motulのグレッグ・ブラックが驚異的な速度で走り、真っ先にマシンにまたがると一気にトップに浮上した。
ポールポジションの全年王者 #33 Team HRC with Japan Post高橋巧が2位、2番手スタートの#7 YART Yamaha Official EWC TEAMニッコロ・カネパが3位につけたが、2周目にはYARTがHRCを抜き去り2位に浮上。HRCはその後4位まで順位を落としてしまう。
代わって10番手スタートからスタート直後に4位まで上がっていた#1 F.C.C. TSR Honda Franceマイク・ディ・メリオが一時的に3位に上がるが、HRCは翌周に2位まで順位を挽回し、7周目にはYARTを抜いてトップを奪還した。
約25分が経過した12周目、4位を走行していたTSRが8位まで順位を落とし、14周目には10位までポジションダウン。さらには18周目のシケインで転倒を喫しピットインしてすぐに修復したが、その時点で32位まで後退し、優勝争いからは大きく遠ざかってしまった。
1回目のピットストップが終わった1時間経過時点、28周目の順位はトップがHRCで、約15秒後にYART、そこから12秒離れてYoshimura。その後は徐々に差が広がり、HRCの完全な単独走行となる中、2位のYARTがトラブルでマシンストップ。ライダーのニッコロ・カネパがマシンを押して西ストレートを歩く姿がモニターに映し出された。その後ピットに戻りトラブルを解消してコースに戻ったが、順位は12周遅れの43位。YARTも勝負権を失った。
これでYoshimuraが2位となるが、この時点でトップのHRCとの差は約1分。その後もHRCは2位以下を引き離すペースで周回を重ね、4時間が経過した頃に全車を周回遅れにしてみせた。
レース終盤、6時間半を過ぎたあたりで雨が降り始める。これで多くのチームがレインタイヤに履き替えたが、トップのHRC高橋巧と3位の#104 TOHO Racing清成龍一はスリックタイヤのまま走行。Team HRCは2分35秒程度までタイムが落ち、レインタイヤに交換したチームは2分20秒程度で走行したため差は縮んだものの、それでも充分な差があるためトップの座は安泰だった。
2位を走行していたYoshimuraはレインタイヤに交換した直後に転倒を喫し、ピットに戻り修復するも、12位まで順位を落としてしまう。これで2位に上がったTOHO RacingはスリックタイヤながらHRCより20秒近く速いタイムを連発。1周以上の差も挽回できる速さをみせて会場が盛り上がるが、雨は20分程度で止んで路面もあっという間にドライに。約1周半の差はそこから縮まることはなかった。
レース全体を通じて2位以下は何度も順位を入れ替える展開となったが、7周目にトップに立ったHRCはその座を脅かされることなく独走でトップチェッカー。2年連続となる勝利を収めるとともに、高橋巧にとっては宇川徹が持つ鈴鹿8耐通算5勝の記録に並んだ。
2位は雨で速さをみせたTOHO Racing。3位は#73 SDG Honda Racing(浦本修充/名越哲平/埜口遥希)。そして一時32位まで落ちたTSRが挽回して4位でチェッカーを受け、EWCランキングトップに浮上した。
レース序盤のトップ争い
2位となったTOHO Racing 清成龍一の走り
優勝したTeam HRC with 日本郵便のピット作業
Team HRCが安定の強さで2連覇を果たす
7月21日、鈴鹿8耐決勝日は朝から快晴となり、11時30分に伝統のル・マン式スタートで開幕した。1コーナーに真っ先に入ったのは8番手スタートの#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM。続いてポールスタートの#1 Yamalube YART Yamaha EWC Official Team、#12 Yoshimura SERT Motul 、2022・2023年と連覇している#30 Team HRC with Japan Postと続く。
YARTが1周目のシケインでトップに浮上。その後HRCが2位に上がり、予選2番手からスタートで順位を落としていた#2 DUCATI Team KAGAYAMAが3位に、6番手スタートの#73 SDG Team HARC-PRO.Hondaが4位となり、まずこの4台でトップ集団を形成した。
レース時間の半分、約4時間が経過した時点でもHRCがトップをキープ。そこにYART、Yoshimuraと続き、トップと同一周回はこの3チームだけとなった。
5時間経過時点ではYoshimuraも周回遅れとなり、トップHRCと約40秒差の2位YARTの2チームだけが同一周回の状況となった。
YoshimuraとTeam KAGAYAMAによる3位争いはレース後半に激しさを増し、残り2時間を切った時点でYoshimuraにピットスルーペナルティが課せられ、Team KAGAYAMAが3位に浮上。その後もこの2チームはまるでスプリントレースのような抜きつ抜かれつのバトルを繰り広げた。
2位のYARTはトップを走るHRCと何とか同一周回を保ち、ワンミスで順位が入れ替わる可能性が残ったまま残り1時間を切った。
ますます激しくなる3位争いは、残り30分を切ったあたりでYoshimuraが3位を奪い返すと一気にスパート。Team KAGAYAMAとの差を広げ始めた。
終盤のトップ争いはHRCが2位のYARTに約50秒の差つけていたが、ピット作業違反に対して40秒加算のペナルティが与えられたため、残り15分で実質の差は約10秒となる。しかしHRCは最後までその差を守りきり、トップでチェッカーを受けて3連覇達成。高橋巧は最多勝記録を更新する6勝目を挙げた。
最後までトップを追い続けたYARTが2位、Team KAGAYAMAとの激しい3位争いを制したYoshimuraが3位表彰台の座を獲得した。
序盤のトップ争い
最多勝記録を更新する6勝目を挙げた高橋巧
HRCを追い詰めた#1 YART - YAMAHA ニッコロ・カネパ
HRC3連覇の原動力となったMotoGP™ライダーヨハン・ザルコ