予定通り11:30にスタートを切った31回目の"コカ・コーラ ゼロ"鈴鹿8耐。
ホールショットを奪ったのはセカンドグリッドからスタートした#34 ヨシムラスズキwith JOMOの秋吉耕佑。
以下、#11 DREAM Honda Racing Team 11の清成龍一、#12 ヨシムラスズキwithデンソー IRIDIUM POWERの酒井大作、#33 DREAM Honda Racing Team 33のジョナサン・レイ、#2 F.C.C.TSR Hondaの伊藤真一と続き、レース序盤はこの5台がトップグループを形成する。2周目のホームストレートでトップに立った#11 DREAM Honda Racing Team 11清成は、レースを引っ張り、3周目には、5台とも2分8秒台に突入するハイペースなオープニングとなる。ここでファステストラップをマークしたのが#12 ヨシムラスズキwithデンソー IRIDIUM POWERの酒井大作だった。6周目のカシオトライアングルで#34 ヨシムラスズキwith JOMO秋吉が#11 DREAM Honda Racing Team 11清成のインをつき、トップを奪うが、9周目のスプーンカーブで#34 ヨシムラスズキwith JOMO秋吉がラインを外した隙に、#11 DREAM Honda Racing Team 11清成がトップを奪い返す。その後、#11 DREAM Honda Racing Team 11清成はジリジリと2番手以下を引き離しレースをリードしていく。2番手には#2 F.C.C.TSR Honda伊藤が浮上し、#34 ヨシムラスズキwith JOMO秋吉が3番手に続く。6番手以降は、#19 モリワキMOTULレーシングの山口辰也、#218 YAMAHA RACINGの中須賀克行、#73 急募.com team HARC-PRO.の小西良輝が三つ巴のバトルを繰り広げていた。トップグループにつけ、健闘していた#33 DREAM Honda Racing Team 33レイは、21周目のデグナーカーブで転倒。すぐに再スタートを切ったものの6番手に順位を下げる。
その後、トップチームに波乱が待っていた。まず、2番手を走っていた#2 F.C.C.TSR Honda伊藤が200Rシケインでまさかの転倒。再スタートしたものの、マシンを修復できずリタイアとなってしまう。さらに、西コースから落雷と共に雨が落ちてくる。この時点でトップは#11 DREAM Honda Racing Team 11のカルロス・チェカだったが、ここがチャンスとばかり#34 ヨシムラスズキwith JOMOの加賀山就臣がペースを上げ、一気にトップを奪う。そのままリードを広げるかと思われたが、雨に足をすくわれ1コーナーでクラッシュ。再スタートし、そのまま走行を続けるが、2番手に落ちてしまう。#11 DREAM Honda Racing Team 11チェカは冷静にコンディションを把握し、トップを奪い返すと、リードを広げていく。さらにペアの#11 DREAM Honda Racing Team 11清成も路面が乾くと自己ベストを更新しながら独走体制を築く。これを追いたい#34 ヨシムラスズキwith JOMO秋吉だったが、ヘアピンでまさかの転倒を喫してしまい順位を下げてしまう。これで3番手に浮上してきた#33 DREAM Honda Racing Team 33レイだったが、スプーンカーブで転倒、再スタートできずにリタイアとなってしまう。
トップを走る#11 DREAM Honda Racing Team 11は、チェカがピットロードでの速度違反で30秒間ストップするペナルティを受けたがトップの座は変わらなかった。#11 DREAM Honda Racing Team11の清成/チェカ組が214周を走り切り優勝を飾った。2番手には#12 ヨシムラスズキwithデンソーIRIDIUM POWERの酒井/渡辺篤組、3番手に#73 急募.com team HARC-PRO.の小西/高橋巧組が入った。
スタートで前に出られたので、状況によって走っていこうと考えていた。ペースをキープして、ミスしないように走ることができればOKと思った。(トップに立ってから)予想以上の差をつけることができて、カルロス(・チェカ)に交代することができた。3回目の走行時にはファステストラップも狙っていたし、シンプルにいいタイムで走れば、優勝できるはずと思っていた。優勝を確信したのはチェッカーを受けてから。今回は新しいマシンとカルロスのおかげで勝てた。チーム全員にとても感謝している。
(2回目の走行時に)雨が降ってきた瞬間、信じられないと思った。けれど、空は青空。路面は乾いている部分もあって、慎重に走れば、そのままコースにとどまるほうがピットインするよりもロスが少ない。そう思ってそのまま走った。今思えば、レースの最も重要なポイントで、正しいジャッジができたのではないかと思う。雨が降ったり、ペナルティを受けたり、レース中は何が起きるかわからない。でも清成が頑張ってギャップを作ってくれて、いいレースができた。鈴鹿8耐で勝って、これまでのトップライダー達と名を連ねることができてとてもうれしい。清成、Hondaチーム、すべてが素晴らしかった。
テストから大きなトラブルも転倒もなかったけれど、やはり決勝は何があるかわからないので、そう思って走りました。やはりHondaのマシンのポテンシャルは高いし、ライダーも素晴らしいので、それがすべて結果に出たと思います。僕も(渡辺)篤さんもチームスタッフを信頼しているし、精一杯やったから満足はしています。でも勝てなかったのはとても悔しいです。
普段乗っているマシンではないけれど、(酒井)大作が仕上げてくれたマシンで順調にテストを行うことができたし、タイムも出すことができた。だけど、決勝では路面温度が高いと攻めきれなくて、いいタイムを出すことができなかった。そういった点をもっと改良して、来年はリベンジして勝ちたい。
8耐は僕の力を貸して欲しいとチームに言われ、今年も参戦しました。パートナーの安田(毅史)はケガをしてしまったのですが、事前テストでマシンを仕上げてくれていました。色々とトラブルもあるけれど、最終的に表彰台に上がれれば、と思って走ったので、最高の結果が出たかなと思っています。
僕は当初第3ライダー登録で、決勝レースを走るとは思っていなかったので正直ビックリしました。とにかく小西さんの足を引っ張らないようにと思って頑張りました。3位になれるとは思っていなかったのでうれしいです。8耐はすごく疲れるけれど、またチャンスがもらえれば走りたいです。
2周のウォームアップラップを終えた出走全チームは、マシンをコースのピット側に、ライダーはコースの観客席側に整列してスタートの合図を待つ。そして恒例となったスタート10秒前のカウントダウンが始まり、午前11時30分、ライダーはマシンに駆け寄りエンジンを始動、ル・マン式スタートにより各車一斉に第1コーナーを目指す。
ここで真っ先に第1コーナーに飛び込んだのが、ポールシッターF.C.C. TSR Hondaの秋吉耕佑だった。そして2番手にMuSASHi RT HARC-PRO.山口辰也、3番手にヨシムラスズキwithJOMO酒井大作、4番手にTRICK☆STAR RACING武石伸也が続く。
オープニングラップから好調に飛ばす秋吉は、すぐに首位の座を確立していくが、2周目に入ったS字コーナーで痛恨の転倒。ダメージを受けたマシンを再始動させてピットに戻るが、修復までに約19分を要してしまう。そしてライダーを伊藤真一に替えて、トップから9周遅れで戦列に復帰する。
優勝候補一角の脱落で、今度は山口がトップに立つが、6周目のシケインで酒井が仕掛けて首位を奪取。その後、山口は酒井を僅差の距離で追うが、迎えた14周目の2輪シケインで、転倒したバックマーカーのマシンの直撃を受けて山口は転倒してしまう。
山口もまた、マシンを再スタートさせてピットに戻るが、マシンの修復を終えて、安田毅史にライダー交替してピットを離れた時、トップからは14周遅れとなっていた。
これで単独首位となったヨシムラスズキwithJOMOは、予定通りに酒井から青木宣篤に、そして徳留和樹にマシンを引き渡して行く。唯一、ヨシムラスズキwithJOMOの危機となったのは、午後1時過ぎに降り始めた雨だった。前後にスリックタイヤを装着する徳留は、我慢のライディングを強いられる。ここに、2番手に浮上した武石が猛追、76周目にその差は約35秒にまで縮まったのだ。
その後、徳留は酒井にライダー交替。武石も井筒仁康に交替するが、午後2時30分過ぎ、豪雨のためにセーフティーカーがコースに入ったのだが、これがちょうど酒井と井筒の間で、二人のタイム差は一気に広がることになってしまった。
今大会は、豪雨により合計4回もセーフティーカーが入る大波乱となったが、各ライダーが自身のパートをきっちりと走り切ったヨシムラスズキwithJOMOが、2007年以来となる通算4度目の優勝を達成。2位にTRICK☆STAR RACING、3位にはHonda DREAM RT 桜井ホンダの亀谷長純と高橋巧が入った。
なお、チェッカーの30分前まで3位を走行しながらも、マシントラブルのために緊急ピットインしたPLOT FARO PANTHERA出口修と寺本幸司は5位でチェッカー。4位には世界耐久選手権を戦うYAMAHA AUSTRIA RACING TEAMが入った。また、レース開始早々に転倒したF.C.C. TSR Hondaは9位、山口そしてパートナーの安田がそれぞれ1回の転倒を喫したMuSASHi RT HARC-PRO.は43位でレースを終えた。
豪雨に見舞われて、戦う者にとって、また、応援するファンにとっても"苛酷"となった今年の"コカ・コーラ ゼロ"鈴鹿8耐。しかし、頑張った者にしか味わえない充足感が、午後7時30分のチェッカーの瞬間に訪れた。そして歓喜の表彰式に続いて打ち上げられた壮大な花火に、鈴鹿サーキットに集まった全ての8耐フリークは酔いしれた。
7月25日(日)午前11時30分、恒例となったル・マン式スタートで"コカ・コーラ ゼロ"鈴鹿8時間耐久ロードレース第33回大会が始まった。
スタートで飛び出したのは、昨年の覇者でありポールシッターの#12ヨシムラスズキwith ENEOS酒井大作。2周目には、スタートで出遅れた#634MuSASHi RT HARC-PRO.高橋巧が2番手に上がり、3番手には、スタート時に他車と接触してクラッチレバーを曲げてしまった#11F.C.C. TSR Honda秋吉耕佑が続く。
3周目の西ストレートで、秋吉が高橋をパスして2位に浮上すると、トップ酒井を猛追。3周目に3秒8あった差は、8周目に1秒を切り、10周目の第2コーナーで、いよいよ秋吉がトップに躍り出た。しかし、この時、酒井がボディアクションで何かをアピール。実はこの区間では追い越し禁止を示す黄旗が提示されていたのだ。
一方、注目を集めた#01エヴァンゲリオン初号機RTトリック☆スターは、12周目に緊急ピットイン。電気系トラブルによるものだったが、これが最後までチームを苦しめることになった。また、2番手となった酒井は、13周目のヘアピンで転倒。マシンのダメージは少なく、ピットに戻らずにそのまま走行を続行するが、この間に、#33Keihin Kohara Racing Team伊藤真一、#634高橋に抜かれて4番手にポジションを下げてしまう。
トップ秋吉にストップ&ゴーペナルティが提示されたのは、1回目のライダー交替直前だった。チームは、ライダーをジョナサン・レイに替えて、レイにペナルティを消化させる作戦だ。そのレイは27周目に30秒停止のストップ&ゴーペナルティを消化し、反撃を開始した矢先、2度目のストップ&ゴーペナルティが提示される。実は秋吉は、デグナーカーブでの追い越し禁止区間でも違反していたのだ。再びレイは28周目に30秒のストップ&ゴーペナルティを消化。10番手からの追い上げとなったレイに、精神的動揺があったとしても不思議ではない。レイは、29周目のスプーンカーブで他車と接触し、転倒してしまったのである。自走でピットに戻ったレイだが、再スタートした際には42番手にまで後退していた。
1回目のピットインを終え、トップに立ったのは#634清成龍一だ。清成は、2番手#33玉田誠を引き離し、独走態勢を固めて行く。その玉田は、41周目のS字コーナーで#12加賀山就臣にパスされて3番手にポジションダウン。そしてこの後、この3台がトップグループを形成するが、ペースが上がらない#33伊藤/玉田は徐々に引き離され、レースのほぼ折り返しとなる100周目には、#634清成龍一/高橋巧/中上貴晶がトップに立ち、3秒7遅れて#12酒井大作/青木宣篤/加賀山就臣、さらにトップから1分9秒遅れで#33伊藤/玉田が追う展開だ。だが、大波乱はその直後に起きた。スタートから3時間55分が経過したS字カーブで、酒井がハードクラッシュしてしまったのだ。再スタートを切り、ピットに戻ったが、ライダーを加賀山に交替してピットアウト。しかし、マシンはダメージを受けており、加賀山は予定外のピットイン。マシン修復を行うことになり、ヨシムラの鈴鹿8耐2連覇の夢は遠のいてしまった。
これでトップを不動のものとした#634清成/高橋/中上は、その後は着実なライディングを続け、215周を走破して優勝。MuSASHi RT HARC-PRO.にとっては悲願の鈴鹿8耐初優勝。清成にとっては歴代最多優勝記録3位タイとなる3勝目。さらに20歳の高橋と、走行はなかったが18歳の中上は、1996年に芳賀紀行が打ち立てた最年少優勝記録(当時21歳)を更新した。また、高橋は、これまで出場した2回の鈴鹿8耐で3位表彰台に立ち、表彰台への登壇確率100%だったが、今大会では優勝という形で100%記録を更新。鈴鹿8耐での高橋巧伝説が始まったことを強烈にイメージさせた。
2位は、トップから1周遅れで#33伊藤/玉田が入る。暑さによる予想外の体力消耗などもありラップタイムを上げられなかったと二人は悔しがるが、着実なライディングでの2位はベテランらしい戦略だ。そして3位には、猛烈な追い上げを見せた#11秋吉/レイは、トップから2周遅れの3位。戦前から「最速コンビ」として注目されていたが、面目躍如となった。
序盤に転倒を喫し、修復のためのピットイン時にタイムロス、一時は3位に後退しトップから30秒以上遅れたF.C.C. TSR Hondaだったが、3時間を過ぎたあたりから徐々に差を縮め、4時間30分経過時点でトップグループに追いつくと一気に2台抜き。その後は徐々に差を広げ最終的に2位に38秒の差を付けて見事トップチェッカー。5年ぶり通算2勝目を挙げた。
予選の失敗から4番手スタートとなったF.C.C. TSR Honda(秋吉耕佑/伊藤真一/清成龍一組)は、スタートを担当した清成が一気に2位浮上。その勢いで1周目の130RでヨシムラSUZUKI Racing Team(加賀山就臣/ジョシュ・ウォーターズ/青木宣篤組)の加賀山を抜いてトップに立ったが、17周目のヘアピンで転倒し2番手に後退。すぐにコースへ復帰し21周目にはトップを奪い返すも、その後の2回のピットインでステアリング部分の修復を行いタイムロス。2時間半経過した時点でトップとは33秒の差が開いてしまった。しかし、ここからF.C.C. TSR Hondaの追い上げ劇が始まった。3時間経過時点で清成にライダーチェンジすると、1時間の担当時間で差を20秒にまで短縮。そして4時間経過時点で秋吉にチェンジすると一気にペースアップ。トップと1秒以上速いペースで追い上げ、30分後には2台のトップグループに肉薄し、そのまま一気にトップに浮上した。
ヨシムラSUZUKI Racing TeamとMuSASHi RT HARC-Pro.(高橋巧/玉田誠/岡田忠之組)はF.C.C. TSR Hondaとともに序盤からトップ争いを繰り広げたが、F.C.C. TSR Hondaがトップに立った時点でヨシムラSUZUKI Racing Teamがペースアップし、MuSASHi RT HARC-Pro.との差を徐々に広げ始めた。その差は最後まで詰まる事がなく、最終的にヨシムラSUZUKI Racing Teamが2位、MuSASHi RT HARC-Pro.が3位でチェッカーを受けた。
以下トップ10は、BMW MOTORRAD FRANCE 99、エヴァRT初号機トリックスターFRTR、クラウン警備保障RACING、YAMAHA RACING FRANCE GMT94 IPONE、テルル・ハニービーレーシング、SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM、TOHO Racing 広島デスモ。注目の島田紳助氏率いるTEAM SHINSUKEは健闘し14位でチェッカーを受けた。
優勝したF.C.C. TSR Honda | 2位のヨシムラSUZUKI Racing Team | 3位のMuSASHi RT HARC-Pro |
記念すべき第35回大会を制したのは、ジョナサン・レイ、秋吉耕佑、岡田忠之のF.C.C. TSR Hondaで、2011年大会に続いて連覇を達成した。このF.C.C. TSRは、2006年にも優勝しており、通算3勝目となったが、ライダー秋吉にとっては、誰よりも感慨深い勝利となった。
なぜなら、全日本ロードレース選手権シリーズ開幕直前のテストで大腿を負傷し、長期欠場。この8耐が復帰レースとなり、そこで勝利を収めることができたからだ。
また、山口辰也、高橋裕紀、手島雄介のTOHO Racing with MORIWAKIが、プライベーターながら2位の表彰台を獲得。さらに3位には、世界耐久選手権にフル参戦するYAMAHA FRANCE
GMT94 MICHELIN YAMALUBEが入ったことでも大きな注目を集めることになった。
一方、ポールポジションから10番グリッドまでを決めるトップ10トライアルでは、MONSTER Energy YAMAHA -YARTの中須賀克行が好走を見せて、ヤマハにとっては2000年の芳賀紀行以来のポールポジションを獲得。また、宇川徹の持つ最多優勝回数『5』を狙ってMuSASHiRT HARC-PRO.から出場した清成龍一(現在4勝)だったが、転倒で記録達成できず、今大会が雪辱戦となる。
F.C.C. TSR Honda(秋吉耕佑/2012) | TOHO Racing with MORIWAKIのピットワーク(2012) |
8耐の第1回大会は、コンストラクターのヨシムラが優勝し、その名を改めて世界に轟かせることになった。同時に、メーカー直系のワークスチームと高い技術力を持つコンストラクターの戦いという図式が出来上がった瞬間でもあった。
一方で、世界でその名を馳せる以前の、若き日の平忠彦、エディ・ローソン、フレディ・スペンサー、ワイン・ガードナー、ミック・ドゥーハン、ケビン・シュワンツらもこの8耐に参戦。特にガードナーは8耐での活躍が認められてHondaのワークスライダーとなり、世界グランプリの500ccクラスでチャンピオンを獲得しており、まさに8耐によってレース人生が変わったライダーだ。
そして今大会では、21年ぶりにシュワンツがTeam KAGAYAMAから参戦。レースは、序盤でトップを快走していたF.C.C. TSR Honda清成龍一が転倒でリタイア。さらにレース終盤では、雨がサーキットを濡らすが、スリックタイヤのまま走行を続けたMuSASHi RT HARCPRO.高橋巧が8耐2勝目を記録。一方、転倒やレース途中でのペナルティでピットストップとなったヨシムラスズキレーシングチームが大逆転の2位、そしてシュワンツを擁するTeam KAGAYAMAは、レース終盤での雨に翻弄されながも3位でチェッカーを受けた。
"コカ・コーラ ゼロ"鈴鹿8耐の決勝レースを翌日に控え、そのスターティンググリッドの上位10グリッドを決めるTOP10トライアルが7月26日(土)に開催された。そして2分06秒703のスーパーラップを叩き出した津田拓也のヨシムラスズキシェルアドバンスレーシングチームがポールポジション獲得。3年連続ポールポジションを逃したMONSTER ENERGY YAMAHA-YARTの中須賀克行は2番手、ジョナサン・レイの2分07秒398でF.C.C. TSR Hondaが3番手スタートとなった。
7月27日(日)の決勝レース。スタート進行は順調に進み、マシンはスターティンググリッドに並べられたのだが、ここで突然に雨が降り始めてしまう。これで鈴鹿8耐史上初となるスタート順延が告げられ、マシンは一度ピットに戻されることになった。
1時間5分の待機を経て、午後0時35分にル・マン式スタートでレースが始まる。午後7時30分のチェッカー時間に変更はなく、6時間55分の耐久レースとなったのだが、サーキット上空には雨雲が広がり、視認性を保つことからスタート時からライトオンのサインが出されていた。
ホールショットはTeam KAGAYAMAが奪うが、第2コーナーではTOHO Racing with MORIWAKIがトップに立ち、その後のシケインでF.C.C. TSR Hondaが首位を奪うという激しい展開。しかし雨を得意とするF.C.C. TSR Honda秋吉耕佑が徐々に後続を引き離していく。一方、2番手のTOHO Racing with MORIWAKIの後方ではケビン・シュワンツ、辻本聡、青木宣篤のLegend of ヨシムラスズキシェルアドバンスレーシングチームと津田拓也、ジョシュ・ウォーターズ、ランディ・ドゥ・プニエのヨシムラスズキシェルアドバンスレーシングチームがポジションを争うが、Legendの青木が6ラップ目の130Rで転倒してしまう。そして8周目には、MuSASHi RT HARC-PRO.がヨシムラスズキシェルアドバンスレーシングチームをパスして3番手に浮上する。
10周目にTOHO Racing with MORIWAKIにMuSASHi RT HARC-PRO.が迫ると、13周目にMuSASHi RT HARC-PRO.が2番手に浮上。その後、路面は徐々に乾き始め、25周目頃から上位陣が続々とピットイン。タイヤをスリックに変更するなどピット作業を終えるとライダー交替して戦いは第2ラウンドへ突入。
秋吉からマシンを受けたジョナサン・レイのF.C.C. TSR Hondaは、レース序盤にして首位固めに入る。だが、再びコース上を大粒の雨が濡らし始めると、全車一気にペースダウン。50周目にレイはピットインし、レインタイヤを装着した秋吉がピットアウト。そして転倒者が出たことでセーフティカーがコースイン。午後2時30分過ぎにリスタートが切られるが、ここでトップF.C.C. TSR Hondaと2番手Team KAGAYAMAとの間にはほぼ1周のアドバンテージが生じていた。
その後に雨は止み、わずかながらに日差しも出てきたなか、F.C.C. TSR Hondaは秋吉からレイにバトンタッチ。雨に強い秋吉、ドライ路面で速さを示すレイと、まさにF.C.C. TSR Hondaは天候をも味方につけた状態だった。だが、108周目の130Rで、レイからマシンを受け継いだ秋吉が痛恨の転倒。これでMuSASHi RT HARC-PRO.の高橋巧が首位に立つと一気にペースアップ。このレースでは、合計4回のセーフティカーが導入されるなど荒れた展開となったが、トップに立ったMuSASHi RT HARC-PRO.は危なげないレース運びで2連覇、通算3度目の"コカ・コーラ ゼロ"鈴鹿8耐の美酒に酔った。また、2位にヨシムラスズキシェルアドバンスレーシングチーム、3位にTeam KAGAYAMAが入り、上位3台は前年と同じチームとなった。
スターティンググリッド上位10グリッドを決める7月25日(土)で、トップタイムを記録したのはMotoGP™ライダーでYAMAHA FACTORY RACING TEAMのポル・エスパルガロ。そのタイムは2分06秒000で、ライバルを愕然とさせるものだった。このYAMAHA FACTORY RACING TEAMは、エース中須賀克行、ポル、そしてポルと同じMotoGP™ライダーのブラッドリー・スミスでのチーム構成。
一方、鈴鹿8耐3連覇を狙うMuSASHi RT HARC-PRO.は、前年と同様に高橋巧、マイケル・ファン・デル・マークに、元MotoGP™チャンピオンのケーシー・ストーナーを呼び寄せて必勝体制を組んでいた。そしてそのストーナーがTOP10トライアルでブランクを感じさせない2分06秒335を記録するのだが、YAMAHA FACTORY RACING TEAM、Team GREENに次ぐ3番手スタートとなった。
7月26日(日)午前11時30分、定刻にル・マン式スタートで第38回"コカ・コーラ ゼロ"鈴鹿8耐が始まった。
ポールポジションのYAMAHA FACTORY RACING TEAM中須賀はエンジンがかからず、走り始めたときには20番手前後にまで順位を落としていた。
その後に中須賀は急激に順位を挽回すると、6周目にはファステストラップ2分08秒496を叩き出してトップグループ5番手となる。さらに14周目には3番手に浮上し、ここから中須賀は2番手の高橋巧のスリップストリームを使い周回を重ねていく。もちろんこれは燃費を稼ぐもので、するとこれが功を奏して1スティント目を28周まで引っ張ってピットイン。チームは26周を想定しており、この走行には吉川和多留監督も「これが優勝できた大きなポイント」と振り返るほどだ。
そして1スティント目を終えた中須賀がクールダウンしているとき、YOSHIMURA SUZUKI Shell ADVANCE津田拓也が130Rでコースアウト。さらに3連覇を狙うMuSASHi RT HARC-PRO.ケーシー・ストーナーがヘアピンで転倒し、肩と足を骨折するというアクシデントが発生した。
これでYAMAHA FACTORY RACING TEAMの2番手ライダーを務めたブラッドリー・スミスはF.C.C. TSR Hondaジョシュ・フックとのマッチレースとなったが、55周目の第1コーナーでフックをパスすると、スミスは32周を走破してルーティンのピットイン。続いて登場したYAMAHA FACTORY RACING TEAMのポル・エスパルガロも順調にトップを快走するが、ここでポルはセーフティカー活動中の追い越しでペナルティが科せられてしまう。30秒のストップ&ゴーペナルティは、エスパルガロからマシンを受けた中須賀が走行中に提示され、中須賀の次に出走したスミスが消化する。
これで再びトップはF.C.C. TSR HondaとYAMAHA FACTORY RACING TEAMの接戦となるが、3ライダーそれぞれの速さでライバルに勝るYAMAHA FACTORY RACING TEAMがトップを不動のものとしていき、最終ライダーを務めたスミスは慎重なライディングで午後7時30分のチェッカーをトップでくぐり抜けると、ヤマハに19年ぶりに勝利をもたらした。
2位はF.C.C. TSR Hondaのフック、カイル・スミス、ドミニク・エガータ。3位には3年連続3位となるTeam KAGAYAMAの加賀山就臣、芳賀紀行、清成龍一となった。また、4位に世界耐久選手権チームのSUZUKI ENDURANCE RACING TEAM、5位はYOSHIMURA SUZUKI Shell ADVANCEとなった。
なお、レースは合計6回もセーフティカーがコースに入る波乱の展開となったが、隊列走行の際にブラッドリーはスクリーンに伏せて走行。少しでも燃費を稼ぐというその姿は、MotoGP™ライダーの勝利に向けた飽くなき姿勢でもあった。
7月31日(日)午前11時30分、恒例のル・マン式スタートで“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第39回大会が始まった。
好スタートを切ったのはTeam KAGAYAMAの清成龍一で、ヨシムラスズキShell ADVANCEの津田拓也、ポールポジションスタートのYAMAHA FACTORY RACING TEAMの中須賀克行と続く。しかしヘアピンカーブで中須賀が大きくラインを外すとポジションをひとつ下げてしまう。
しかし、その後の中須賀の追い上げは激しく、2周目にトップ清成の背後に迫ると、7周目からは清成と中須賀のマッチレースとなる。しかし、中須賀は清成を無理に抜くことはせず、清成のペースが落ちるのを待つ作戦をとった。そして18周目に中須賀にチャンスが訪れるとシケインで清成をパスしてトップに浮上。そしてこの後はトップを堅持したままマシンを第2走者のアレックス・ローズに託す。
そのローズも快調にラップを重ね、さらに第3走者のポル・エスパルガロもまったく隙を見せない。これでYAMAHA FACTORY RACING TEAMはまったく危なげないレース運びで昨年に続いて連覇を達成。そして走破した218周は、二輪シケインが新設されて以来の最多周回数記録となった。
なお、2位にはTeam GREENの柳川明、レオン・ハスラム、渡辺一樹が入り、YAMAHA FACTORY RACING TEAMと同一の218周を記録。3位には ヨシムラスズキShell ADVANCEの津田、ジョシュ・ブルックス、芳賀紀行が入ったが、YAMAHA FACTORY RACING TEAMとは1ラップ差だった。
なお、注目のMuSASHi RT HARC-PRO.のニッキー・ヘイデンは、ヘイデンが走行中にマシントラブルが発生してリタイア。今年の世界耐久選手権第1戦ル・マン24時間で3位となったF.C.C. TSR Hondaは第1走者のドミニク・エガーターが7周目の二輪シケインで転倒して緊急のピットイン。マシン修復するが18位フィニッシュとなった。また、Team KAGAYAMAは、1回目のピットインの際、ピットワークでトラブルがあり、加賀山就臣がライディング中にフロントタイヤがスローパンクチャー。これで大きく順位を落としたが、6位まで挽回した。
7月30日(日)午前11時30分、恒例のル・マン式スタートで“コカ・コーラ”鈴鹿8耐第40回記念大会が幕を明けた。
スタートダッシュから真っ先に第1コーナーに飛び込んだのは#11 Kawasaki Team GREENのレオン・ハスラムで、#634 MuSASHi RT HARC-PRO.Hondaの高橋巧、#25 Honda鈴鹿レーシングチーム日浦大治郎、#19 MORIWAKI MOTUL RACING清成龍一が続く。そして逆バンクで清成が日浦をパスし、ダンロップコーナーでは高橋巧がハスラムをパスしてトップに浮上する。
だが、このときすでに西コースでは雨が降り始めており、細心の注意を必要とする状態だった。そしてバックストレートには高橋巧、ハスラム、そして#21YAMAHA FACTORY RACING TEAMの中須賀克行の3人が集団となっており、やや離れて#71 Team KAGAYAMAのハフィス・シャーリンが続く。
2周目のヘアピンで#12ヨシムラスズキMOTULレーシングの津田拓也が転倒。再スタートを切るが津田はピットに戻りマシン修復。これで早くも優勝戦線から脱落してしまった。また、4周目のヘアピンでは#39 BMW Motorrad39のラファエレ・デ・ロサが転倒してしまう。
その後、高橋巧、中須賀、ハスラムの3人がトップ集団を形成して後続を引き離して行くが、ドライ用スリックタイヤで走る3人の中からハスラムが徐々に遅れてしまう。
これでトップは高橋巧と中須賀の一騎打ちとなり、16周目の最終シケインで中須賀が高橋巧を攻略して首位に立つ。しかし高橋巧も18周目に中須賀を抜き返してトップに返り咲くのだが、22周目に再びトップに立った中須賀がそのまま首位をキープしたままアレックス・ローズへとマシンを託す。
この直後、ヘアピンで転倒がありセーフティーカーが介入。この混乱の中で高橋巧からマシンを受けたジャック・ミラーがトップに立ち、ローズとのマッチレースを展開する。36周目の第1〜2コーナーで膨らんでしまったミラーのインを突いてローズがトップに浮上すると、その後は着実にミラーを引き離して行った。
ローズからマシンを託されたマイケル・ファン・デル・マークは、トップのままコースイン。一方、ミラーからマシンを受けた中上貴晶は着実にファン・デル・マークとの差を縮めはじめていく。当初4秒以上あった差は、1秒を切るところにまで行くが、そこでファン・デル・マークはペースを上げると、その差を広げ始めていった。さらにその後、中上はヘアピンで転倒してしまい、その差は一気に広がることになった。
ファン・デル・マークからマシンを引き継いだ中須賀は、速いペースでのアベレージ走行に徹して首位固めに入る。さらに中須賀からマシンを受けたローズは2分06秒932のスーパーラップを記録するなど後続との差を大きく広げていく。60周を過ぎた午後1時50分、S字コーナーで清成が転倒。そしてその直後にEWCポイントリーダー#1 SERTの濱原颯道がスプーンカーブで転倒してしまい、両者とも再スタートを切るが優勝戦線から脱落。また、#79 Team SuP Dream Hondaのグレッグ・ブラックがスタートから3時間過ぎに130Rで転倒して順位を下げてしまった。
YAMAHA FACTORY RACING TEAMが順調にトップを快走するなか、ライバルチームにはアクシデントやトラブルが襲いかかる。140周を過ぎてMuSASHi RT HARC-PRO.Hondaのマシンのヘッドライトが片方しか点かずに修復のためにピットイン。さらにその後、同チームのリアタイヤがパンクチャーを起こして緊急ピットインを強いられた。また、午後7時前に逆バンクでの転倒者によりセーフティーカーがコースに入ったが、それが解除された直後、今度はF.C.C. TSR Hondaのマシンにアクシデントが発生して緊急ピットイン。これでKawasaki Team GREENが2位に浮上するが、トップのYAMAHA FACTORY RACING TEAMに追いつく術はなかった。
Kawasaki Team GREENは渡辺一馬とレオン・ハスラム、F.C.C. TSR Hondaはドミニク・エガーターとランディ・ドゥ・プニエと、両チームとも2人のライダーで8時間を走破。Kawasaki Team GREENは昨年と同様に優勝したYAMAHA FACTORY RACING TEAMと唯一の同一ラップとなる216周を走破するが、その差は2分09秒052であり、ほぼ1周に近いタイム差があった。また、3位にはF.C.C. TSR Hondaが入った。
表彰式
優勝したYAMAHA FACTORY RACING TEAM中須賀克行選手の走り
2位 Kawasaki Team GREENピット作業
3位F.C.C.TSR Hondaドミニク・エガーター選手の走り