97年の8耐覇者、伊藤がこの年も絶好調。計時予選、スペシャルステージともにトップタイムをマークして、堂々のポールポジション獲得となった。レースは序盤、相変わらずのハイペースバトルが展開される。そして、伊藤/宇川と加藤/武田の2台が抜け出していく。その後、1回目のライダー交代を終えると、今度は宇川と武田の差が広がっていき、2回目のライダー交代を迎える頃には、猛追を見せた芳賀紀行が2位へと浮上する。しかし、この後に芳賀、加藤のマシンはトラブルに見舞われるなど、ライバルの脱落も手伝って、伊藤/宇川が連覇を達成した。
伊藤/宇川がポールポジションを獲得し、3連覇に向けて好スタートを切る。しかし、伊藤がトップ争いをしていた13週目にクラッシュ。その後に猛追を見せるが、トップには届かなかった。これで、トップは岡田/バロスと加藤/玉田に絞られていく。
明暗を分けたのは天候だった。玉田、そしてバロスが2回目の走行時に突然雨が降りはじめ、タイヤ交換のためにピットは騒然とする。一方バロスはスリックタイヤで我慢の走行を続けるが、その後に雨は止み、路面は急速に回復。レインタイヤに交換したチームは改めてピットインを余儀なくされたが、これでバロスは後続にアドバンテージを築き、さらに、その後の加藤の転倒も手伝って、岡田は95年以来の8耐優勝を遂げた。
この年から、ホンダはV型2気筒1000ccのVTR1000SPWを投入。計時予選では宇川/加藤がトップタイムをマークして、順調な仕上がりを見せる。一方、スペシャルステージでポールポジションを獲得した芳賀紀行/吉川は、スタートから約35分後の130Rで転倒して優勝争いから脱落してしまう。その後、アクシデントによりペースカーが導入されるが、レースが再スタートとなったとき、一気に宇川がスパートをかけてトップに立つ。そして宇川/加藤、柳川/井筒のバトルはレース終盤まで続いたが、チェッカーまで約2時間のところで井筒が転倒。これで、宇川/加藤は全車を周回遅れにして、新記録の215周を走破して優勝を遂げた。
ポールシッターの梁がホールショットを決めてレースがスタート。混戦のなかで迎えた1回目のライダー交代の後、梁のパートナー加賀山がコースアウト。これでロッシ/エドワーズ/鎌田、宇川/加藤/玉田、岡田/バロス/伊藤のキャビン・ホンダが1-2-3。そしてレース中盤ではバロスとエドワーズが激しいトップ争いを展開しながら後続を引き離す。その後、トップが156周目に入ったところでペースカー2台が入るアクシデントが発生。この、ペースカーの入るタイミングで、首位はエドワーズとバロスの一騎打ちに。だが、最後のピット作業に手間取ったバロスは、結果2位でゴール。ロッシは参戦2年目にして8耐の美酒に酔った。
この年、"コカ・コーラ"鈴鹿8耐の新しい戦法が誕生した。それまでは約1時間ごとにピットワークおよびライダー交替を行うのが正攻法とされていたが、ホンダ・ワークス勢は綿密に燃費計算をし、なんと6回ピット作戦を敢行してきたのだ。ライダーの、1回の走行時間が増して負担は増えるが、ピット作業でのタイムロスやアクシデントを回避するために採用された作戦。そして、これが見事に奏功して、チームキャビンホンダが1-2、そしてTeam桜井ホンダが3位に続いた。
しかし、レース自体は単調なものではなかった。梁 明と加賀山就臣のTeam SUZUKIは、レース開始から約6時間後にマシントラブルでリタイアするまで2番手を走行してホンダの牙城に迫ったし、表彰台を独占したホンダ勢にあっても、レース終盤での雨によって3チームのタイム差がグッと縮まったからだ。結果的に、順位の変動にまでは至らずに加藤大治郎とコーリン・エドワーズが優勝。2位には玉田誠と岡田忠之、そして3位のアレッシャンドレ・バロスと武田雄一までがトップと同一の219ラップでチェッカーを受け、表彰台は3台のホンダVTR1000SPWで占められた。そして終わってみれば、順調に進みすぎるホンダの6回ピット作戦に、ライバルチームは翻弄され、自滅した形であった。
スタートから1時間の間に2回もセーフティーカーが導入されるという荒れた展開に、優勝候補が序盤で姿を消すことになる。
そんな中、ケンツスズキの北川/藤原組が安定的にトップで周回を重ねた。誰もがそのままチェッカーだと思っていた終盤にトラブル発生、総合40位に終わる。
本命ホンダワークス2台は、転倒とトラブルに悩まされ、共にリタイアに終わる中、桜井ホンダ生見/鎌田組が、激戦の8時間を戦い抜き、栄光のゴールへ滑り込んだ。安定した走行をしたYSP中冨/吉川組が2位、ポールスタートのTSR伊藤/辻村組は序盤のトラブルから一時40番手位まで後退しながらも怒涛の追い上げで3位表彰台を獲得した。
そのTSRは序盤に辻村が転倒し、表彰台の夢は儚く消えた。2台のワークスマシンで挑んだホンダも、序盤に鎌田が転倒し戦列を離れてしまう。その後もコース上では転倒が続き、12周回目にセーフティーカーが導入される。このセーフティーカーが1位を走行していた宇川/井筒組と2位集団に大きな差をつけることとなる。 その後、一度もトップを譲ることなく順調に周回を重ね、8時間(210周)を走りきり、昨年の雪辱を果たすトップチェッカーを受けた。創立50周年を迎えて志気上がるヨシムラスズキは2位、3位にホンダ学園DDBOYSが入った。
70台が参加して、伝統のル・マン式でスタートが切られた第28回"コカ・コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース。7万2000人の大観衆が見守る中、予選2位のセブンスターホンダ7、清成龍一が好スタートでトップに浮上すると、ぐんぐん後続を引き離す快走。バトンを受けた宇川徹もそれを上回る走りを披露した。
スタートして1時間半の午後1時ころに大粒の雨が降り出し、転倒が相次ぐなどレースは混乱したが、清成組はまったく関係なし。悪コンディションの中どのチームよりも速いラップタイムを刻み続け、レース折り返しの4時間経過時点では2位F.C.C.TSR ZIP-FM Racing、伊藤真一/辻村猛組に1周の差をつけるほどの速さを見せ、その後も清成組のペースは衰えることはなかった。
中盤に入ると打倒ワークスに燃える有力プライベーターを次々と不運が襲った。まずは3位走行のヨシムラスズキJOMOwithSRIXONの渡辺篤/加賀山就臣組が転倒。代わって3位に浮上したのがモリワキMOTULタイガーレーシングの松戸直樹/レオン・キャミア組。しかし渡辺組が転倒したわずか20分余りあと、松戸組も痛恨の転倒を喫してしまう。不運はまだ続いた。2位から後半追い上げ体制に入った後半、スタートから4時間46分を経過した時、伊藤組が緊急ピットイン。電気系トラブルだった。修復に20分以上を要し大きく後退してしまった。
2位以下が次々と脱落して清成組は2位に4周もの大差をつける結果に。そしてその2位に浮上したのがセブンスターホンダ11、クリス・W耐9連覇の偉業を達成。昨年ワイン・ガードナーに並ぶ4勝目を記録していた宇川は、5勝の新記録達成となった。清成は初優勝。オートレースに転進し、2年ぶりの8耐参戦となった青木治親がブランクを感じさせない走りでじわじわとポジションアップ。ペアライダー安田毅史の健闘も光り、オートレースTEAM HARC-PROが3位フィニッシュ。青木、安田とも初表彰台となった。
総合2位 No.11 セブンスターホンダ11 |
総合優勝した No.7 セブンスターホンダ7 |
総合3位に入った No.73 オートレース TEAM HARC-PRO |
宇川 徹 | |
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これで天下取りましたね。最高のパートナー、最高のマシンでした。今日は本当にうれしい。 雨が降ってきて、清成の好判断でピットインして(2位に)1周の差がついた。 あとは自分たちのペースを崩さないように心がけた。5勝してこれまでの記録を抜いたので良かった。 |
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清成 龍一 | |
スタートは緊張しましたが、昨日のSSほどじゃなかった。後続との差があそこまで開くとは思わなかった。 この2年間8耐は決勝を走っていなかったし、トップを走るのも初めて。 気を抜かないように走りました。 |
クリス・バーミューレン | |
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8耐は世界的に有名なレース。いつも出たいと思っていたからホンダからオファーがあったときはうれしかった。 鈴鹿も、マシンも、タイヤも初めての経験だったがエンジョイできた。 フジワラはすごく速くていいパートナーだよ。 |
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藤原 克昭 | |
練習走行で転倒して背骨が折れた。2週間半でくっつくのは無理。終盤は痛み止めを打って走った。 なんとしてもこの座(2位)をキープしたかった。ホンダに貢献できて誇りに思っている。 クリス(バーミューレン)はパートナーとして力強かった。 |
青木 治親 | |
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今日の3位は出来すぎじゃないかな。いきなり出場してうまく行き過ぎで怖いくらい。 安田君が雨の中をがんばってくれた。タイヤもバイクも良かった。 表彰台は本当に気持ちいいですね。 |
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安田 毅史 | |
青木さんが走る時間が少なかったので、青木さんよりにマシンをセッティングして、僕はそれに合わせた。 最後夜走ったのは初めてだったので無理しないで行こうと思った。 まだ夢みたいですね。 |
7月30日(日)、73,000人の観衆が見守るなか、定刻の午前11時30分に第29回"コカ・コーラ"鈴鹿8耐がル・マン式スタートで幕を開けた。そして波乱は、オープニングラップに待ち受けていた。モリワキMOTUL レーシング森脇尚護がS字で追突されて転倒。さらにヘアピンでは亀谷長純と#45 YAMAHA BLUE RACING コーリン・エドワーズが接触して転倒。その後、5周目のスプーンカーブでエドワーズはマシンを止めてリタイアしてしまう。
レース序盤、トップに立っていた#7 セブンスターホンダの清成龍一だったが、16周目に予定外のピットイン。これで#778 F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team 伊藤真一がトップに立つと、その後はまったく危なげない走りで、パートナーの辻村猛とともに悲願の優勝を遂げた。
総合2位には、やはり安定した走りを見せた#101 TOY STORY RT RUN'A & HARC-PRO. 、総合3位は#12 ヨシムラスズキwith JOMO。そして Hondaワークスは、岡田忠之と出口修の#11 セブンスターホンダ11が総合4位、清成龍一と玉田誠の#7 セブンスターホンダが総合5位となり、#04 仮面ライダーカブトHonda DREAM RTは総合6位となった。
初優勝を飾った#778 F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Teamの伊藤選手の走り |
安定した走りで2位に入った#101 TOY STORY RT RUN'A & HARC-PRO. の安田選手の走り |
優勝にあと一歩届かなかったが3位となった#12 ヨシムラスズキ with JOMOの青木選手の走り |
見事に4位入賞を果たした#11 セブンスターホンダの出口選手の走り |
序盤大きなトラブルに見舞われながらも大健闘の 走りで5位に入った#7 セブンスターホンダの玉田選手の走り |
総合6位に入った#4 仮面ライダーカブト Honda DREAM RTの徳留選手の走り |
伊藤 真一 | |
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「夢みたいな気分。今年はマシンのセッティングを僕よりにしてくれた。 タイヤは僕がオーダーしたタイヤをブリヂストンが用意してくれた。それも当たったと思う」 |
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辻村 猛 | |
「鈴鹿300km耐久でリタイアに終わった悔しさで、逆にチームが一丸になれた。 それが一番の勝因だと思う」 |
安田 毅史 | |
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「ついて行けるところまでついて行こうと思った」 | |
小西 良輝 | |
「今回の2位は、安田が最初の走行でトップ集団に喰らいついていったことに尽きる。 体力的にもきついレースでしたが、安田の走りに感化され7時半まであきらめずに頑張りました」 |
渡辺 篤 | |
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「僕はスタートが下手なので青木さんにスタートライダーを任せました。 マシン、タイヤは良かったが、テストで転んだときの影響で、僕自身の体調が悪かった」 |
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青木 宣篤 | |
「3位の表彰台は、チームの総合力のおかげ。 吉村不二雄監督の采配に感謝しています」 |
午前11時30分に、恒例のル・マン式スタートで始まった"コカ・コーラ ゼロ"鈴鹿8耐。
第1コーナーに真っ先に飛び込んだのはヨシムラスズキ with JOMO 34 の加賀山就臣で、2番手にはTEAM HRC 11 清成龍一、3番手にはYAMAHA RACING 81 阿部典史が続く。
加賀山はスタート直後から2分09秒台のハイペースで周回を重ね、2番手以降を引き離しにかかる。このペースについていくのは清成のみだったが、その清成も周回遅れが出始めた頃から少しずつ引き離されてしまう。
一方、ポールポジションからスタートしたTEAM HRC 33 岡田忠之は、5番手からトップを追う形となったが、なんとその岡田はスタートの際にフライングを犯してしまい30秒のピットストップペナルティを受けてしまう。これで、TEAM HRC 33 は優勝争いから大きく遅れをとる形となってしまった。また、スタート後に3番手にまで順位を上げた急募.com team HARC-PRO. 安田毅史は、スプーンカーブ立ち上がりで周回遅れと絡んで転倒、優勝争いから脱落してしまう。
レース終盤に入っても、2分11秒台という安定した速さで周回を重ねるヨシムラスズキ with JOMO 34 は、残り1時間15分となった185周目に2番手のTEAM HRC の背後に接近。慎重に抜くチャンスを伺った加賀山は、188周目のヘアピン手前で岡田をパス。これでヨシムラスズキ with JOMO 34 は、参加全車をラップ遅れとしたのである。
一方、レースも残り1時間を過ぎたとき、5番手を走っていたYAMAHA RACING 81 ジェイミー・スタファーがピットイン。マシンからオイルが漏れるトラブルが起こっており、その補修作業に4分を費やして順位を下げてしまう。これで5番手にはモリワキ MOTUL レーシング 山口辰也が上がり、結果、モリワキ MOTUL レーシングはこの順位をキープしてチェッカー。
さて、ヨシムラスズキ with JOMO 34 は、夜間走行でも危なげない走りで周回を重ねると、いよいよ午後7時30分にチェッカー。216周を走り切ったヨシムラは、鈴鹿8耐の第3回大会以来、実に27年ぶりとなる優勝を遂げた。そして2位にはTEAM HRC 33 が入り、3位は昨年の優勝チームF.C.C.TSR ZIP-FM Racing Team が2年連続で表彰台を獲得した。
ヨシムラスズキ with JOMO 34 加賀山 就臣 |
ヨシムラスズキ with JOMO 34 加賀山 就臣/秋吉 耕佑 |
TEAM HRC 33 岡田 忠之 |
TEAM HRC 33 カルロス・チェカ(Carlos CHECA)/岡田 忠之 |
F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team 伊藤 真一 |
F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team 伊藤 真一/手島 雄介 |