日本トップフォーミュラマシンの系譜〜F3000-FN-SFマシンの変遷〜

Photo :SAN-EI
 JAF鈴鹿グランプリの10月29日(土)・30日(日)各日のピットウォーク中、次期導入を目指して開発を進めているカーボンニュートラル開発テスト車両のデモンストレーションランが行われる。このテスト車両は、全日本スーパーフォーミュラ選手権を開催する株式会社日本レースプロモーションが、サステナブルなモータースポーツ業界づくりを目的としたプロジェクト「SUPER FORMULA NEXT50」の取り組みの一環として、「ボディワーク素材」、「タイヤ」、「燃料」の面でカーボンニュートラルの実現に向けた様々なテストを実施すると同時に、ドライバーの力を最大限引き出せるエアロダイナミクスの見直しなど、エンターテインメントの向上にも挑戦している。

 このマシンは現在使われている「SF19」の後継に当たる訳だが、これまで全日本スーパーフォーミュラ選手権に繋がる日本トップフォーミュラの系譜では、これまで一体どんなマシンが活躍してきたのだろうか?ここではそれを紹介していこう。
マーチ87B・HondaRA387E(1987)
マーチ87B・HondaRA387E(1987)
Photo :SAN-EI
 1986年まで国内のトップフォーミュラレースは、2L自然吸気エンジンを搭載した「F2」で開催されていた。当時日本のF2レースに出走していたのは主に英国マーチ社のものをブリヂストン、ダンロップ、ヨコハマのタイヤメーカーとHonda、ヤマハ、BMWのエンジンを搭載したマシンで争っていた。F1直下のクラスだったF2だが、1986年欧州ではすでに「F3000選手権」がスタートし、日本のマシンはそれをF2に改良したものだった。

 1987年は当初、F2に全日本選手権が懸けられたがエントリーが無く、混走が認められていたF3000マシンによるシリーズとなった。マシンはマーチとローラのF3000専用マシンか、前年F2を走っていたF2改F3000マシンで、開幕戦の鈴鹿2&4には17台のF3000が集合した。搭載エンジンはHonda F3000用エンジンRA387Eが4チームに供給されたが、そのほかの13台はコスワースDFVを搭載していた。1987年は中嶋悟がロータスF1ドライバーとしてF1に進出し、フジテレビでF1中継が始まると日本国内にモータースポーツブームが押し寄せた。

【マシンスペック】

  • 全長×全幅×全高
    4115×2000×965mm
  • ホイールベース
    2591mm
  • トレッド(前/後)
    1708/1588mm
  • シャシー
    アルミハニカム+カーボン&ケブラーモノコック
  • サスペンション
    前後プルロッド
  • トランスミッション
    ヒューランドFT200 5速
  • 車重
    540kg以上

【エンジン】

  • 形式
    水冷V型8気筒 32バルブDOHC
  • 排気量
    2997cc
  • 最大出力
    400馬力以上/9000回転
  • 最大トルク
    ──kgm
  • 重量
    ─kg
 翌1988年に初めてF3000に全日本選手権が懸けられた。日本の好景気に後押しされ、スポンサーもついたため、各チームは新型シャシーを競って導入。チームは使い慣れたマーチまたはローラを使っていたが、シーズン途中から新興コンストラクターのレイナードを導入するチームも出てきた。国内コンストラクターのムーンクラフトは、オリジナルマシンMC031&041を製作しテスト参戦した。多くのチームは、無限MF308を搭載したが、一部チームはヤマハが改良したDFVを搭載した。そして1989年もマーチ、ローラ、レイナードの最新の欧州F3000マシンが普通に国内のグリッドに並んでいた。
レイナード89D・無限MF308(1989)
レイナード89D・無限MF308(1989)
Photo :SAN-EI

【マシンスペック】

  • 全長×全幅×全高
    4213×2000×990mm
  • ホイールベース
    2828mm
  • トレッド(前/後)
    1680/1550mm
  • シャシー
    カーボンコンポジットモノコック
  • サスペンション
    前:プッシュロッド/後:プッシュロッド
  • トランスミッション
    ヒューランド製  5速
  • 車重
    540kg以上

【エンジン】

  • 形式
    水冷V型8気筒 32バルブDOHC
  • 排気量
    2997cc
  • 最大出力
    460馬力以上/9000回転
  • 最大トルク
    37.0kgm/7500回転
  • 重量
    139kg
 1990年にはエントリーも30台を越え予選落ちも出る事態に。1991年には英ラルトカーズのF3000マシンが上陸、さらに童夢がオリジナルマシンF102を走らせた。童夢は改良を重ね、1994年にはF104でドライバーチャンピオンを獲得した。

 1995年1月、阪神大震災のためダンロップがF3000用タイヤの供給を停止したため、使用タイヤはブリヂストンとヨコハマに変更された。

 1996年からは国内トップフォーミュラシリーズの名称が「フォーミュラ・ニッポン」に変更された。とはいえ、参加するマシンはF3000時代と替わりないローラまたはレイナード、童夢だった。エンジンも無限MF308が主流で一部ジャッド、DFVのユーザーがいた。
 1997年には使用タイヤをブリヂストンのワンメイクにすることで、コスト削減を図った。1998年にはエンジンも無限MF308のワンメイクになった。また新しいコンストラクター「Gフォース」が上陸し、レイナード、ローラ、Gフォースの参加が続く。
GフォースGF03・無限MF308(1999)
GフォースGF03・無限MF308(1999)
Photo :SAN-EI

【マシンスペック】

  • 全長×全幅×全高
    4300×1976×983mm
  • ホイールベース
    2845mm
  • トレッド(前/後)
    1680/1565mm
  • シャシー
    カーボンハニカムコンポジット
  • サスペンション
    前:プッシュロッド/後:プッシュロッド
  • トランスミッション
    ヒューランド製シーケンシャル  5速
  • 車重
    625kg以上(ドライバー含む)
 2002年には製造年は前後していたものの、全チームがレイナードを使って参戦することとなった。エンジンは無限MF308、タイヤはブリヂストンとワンメイク状態となり、ほぼ同じマシンを使ってドライバーの腕次第で争うトップフォーミュラシリーズとなり、名実ともに日本オリジナルのフォーミュラシリーズ「フォーミュラ・ニッポン」が確立した。
しかしそのレイナードが同年中に倒産してしまい、マシンの供給が出来なくなってしまった。そのため2003年からはローラB351+無限MF308+ブリヂストンによるワンメイクシリーズとなる。また3年後には新しいシャシーに変更することも決定した。

 マシン変更年となった2006年にはローラB06/51(FN06)が採用されJRPから各チーム供給された。タイヤはブリヂストンのままだったが、無限MF308供給が出来なくなったため、TOYOTAとHondaからインディレーシングリーグに供給していた3LV8エンジンを改良したTOYOTA RV8JとHonda HF386Eが供給された。それまでの無限エンジンが約460馬力だったのに対して、TOYOTAとHondaのエンジンは約550馬力を発生し、レースのスピードアップが期待された。
ローラFN06(B06/51)・TOYOTA RV8J(2006)
ローラFN06(B06/51)・TOYOTA RV8J(2006)
Photo :SAN-EI

【マシンスペック】

  • 全長×全幅×全高
    4668×1879×─mm
  • ホイールベース
    3000mm
  • トレッド(前/後)
    1503/1389mm
  • シャシー
    カーボンコンポジット
  • サスペンション
    前:プッシュロッド/後:プッシュロッド
  • トランスミッション
    ローラLT2A製シーケンシャル 6速
  • 車重
    ──kg以上

【エンジン】

  • 形式
    水冷V型8気筒 32バルブDOHC
  • 排気量
    2998cc
  • 最大出力
    550馬力以上
  • 最大トルク
    ──kgm
  • 重量
    127kg
 2009年の更新年には斬新なスタイルで話題を呼んだスイフト社の017.n(FN09)が採用された。搭載エンジンはTOYOTAとHondaからTOYOTA RV8K、Honda HR09Eが供給された。このエンジンは排気量を3.4LV8に変更しSUPER GTのエンジンと共用を狙った。いずれも従来のエンジンより約50馬力高い、600馬力を発生している。また両方のエンジンには共通のエンジンコントロールユニット(ECU)が使われ、通常の回転数を1万3000回転に制御している。新機軸として「オーバーテイクボタン」を採用した。これは一度スイッチを押すと、20秒間回転数を400回転アップできるもので1レース5回まで使えた。2013年まで同マシンは使用され、2013年にシリーズ名称が「スーパーフォーミュラ」に変更されたことでマシン名称もSF13となった。
スウィフトFN09(017.n)・TOYOTA RV8K(2009)
スウィフトFN09(017.n)・TOYOTA RV8K(2009)
Photo :SAN-EI

【マシンスペック】

  • 全長×全幅×全高
    4775×2000×──mm
  • ホイールベース
    3000mm
  • トレッド(前/後)
    1503/1389mm
  • シャシー
    カーボンコンポジット
  • サスペンション
    前:プッシュロッド/後:プッシュロッド
  • トランスミッション
    リカルド製6速パドルシフト
  • 車重
    712kg以上(ドライバー込み)

【エンジン】

  • 形式
    水冷V型8気筒 32バルブDOHC
  • 排気量
    3399cc
  • 最大出力
    600馬力以上
  • 最大トルク
    ──kgm
  • 重量
    120kg
 2014年のマシン更新年にともない、イタリア・ダラーラ社製造のSF14が採用された。SF14はその開発コンセプトを「クイック&ライト」のスーパーフォーミュラ専用マシンとして製造された。エンジンもSUPER GT GT500と共用の2L4気筒ターボエンジンを搭載している。TOYOTA RI4A、Honda HR-414Eは燃料リストリクターを採用し、出力を約550馬力に制限しているが、オーバーテイクシステムの条件を「20秒間燃料流量を増やす」としたことで、レース中の追い抜きの醍醐味は損なわれなかった。2016年にはコントロールタイヤがヨコハマに変更された。
ダラーラSF14・Honda HR-414E(2014)
ダラーラSF14・Honda HR-414E(2014)
Photo :SAN-EI

【マシンスペック】

  • 全長×全幅×全高
    5268×1900×960mm
  • ホイールベース
    3165mm
  • シャシー
    カーボンコンポジット
  • サスペンション
    前:プッシュロッド/後:プッシュロッド
  • トランスミッション
    リカルド製6速パドルシフト
  • 車重
    660kg以上(ドライバー込み)

【エンジン】

  • 形式
    水冷直列4気筒 16バルブDOHCターボ
  • 排気量
    1995cc
  • 最大出力
    550馬力以上
  • 最大トルク
    ──kgm
  • 重量
    85kg
 そして2019年にはSF14の「クイック&ライト」のコンセプトを受け継いだSF19が走り出した。外観上の大きな変更点は、ドライバーの頭部保護を目的としたHalo(ヘイロー)を導入したこと。オーバーテイクシステムも、最大100秒間使うことが出来るようになった。2021年にはそれが200秒に拡大され毎レースの熱戦の演出に一役買っている。
ダラーラSF19・TOYOTA Biz-01F(2019)
ダラーラSF19・TOYOTA Biz-01F(2019)
Photo :SAN-EI

【マシンスペック】

  • 全長×全幅×全高
    5233×1910×960mm
  • ホイールベース
    3115mm
  • シャシー
    カーボンコンポジット
  • サスペンション
    前:プッシュロッド/後:プッシュロッド
  • トランスミッション
    リカルド製6速パドルシフト
  • 車重
    670kg以上(ドライバー込み)

【エンジン】

  • 形式
    水冷直列4気筒 16バルブDOHCターボ
  • 排気量
    2000cc
  • 最大出力
    550馬力以上
  • 最大トルク
    ──kgm以上
  • 重量
    ──kg
 現時点でSF19の後継マシンの導入時期についての明確なアナウンスは無いが、次期導入を目指して開発が進められているテスト車両のデモンストレーションランがJAF鈴鹿グランプリで行われる所から見ても、その導入はそう遠くないだろう。次期マシンの導入によって、スーパーフォーミュラのバトルやチームの勢力図に一体どんな変化の波がやってくるのか、期待して待とう。

※内容は予告なく変更となる場合がございます。
※使用している写真・イラストはイメージです。