F1

中野信治が語る角田裕毅の魅力

今年、小林可夢偉以来7年ぶりのF1レギュラードライバーとなったアルファタウリ・ホンダの角田裕毅。20歳でのF1デビューはこれまで日本人としてF1参戦したドライバーのなかでも最年少で、それまでカートで十分な経験と実績があったものの、2017年にF4で四輪シリーズデビューしてからわずか4年でのF1挑戦と、角田裕毅の経歴とプロフィールを見るだけでも、今後の可能性に期待せざるを得ない。

その角田裕毅のレーシングドライバーとしての特徴、ポテンシャル、そして今季F1デビューイヤーを迎えるに当たって課題を、元F1ドライバーで現在Hondaの若手ドライバー育成担当を務める中野信治氏に聞いた。

中野信治が語る角田裕毅の魅力Photo AlphaTauri

「F4に参戦していたころ、速いドライバーとして彼の名前は聞いていましたが、彼の走りを具体的に見るようになったのは、2019年にFIA-F3にステップアップしてからになります。2019年にレッドブル・ジュニアの一員となってFIA-F3のレースに出て、DAZNの中継で彼のレースを見て、その年のスペインGPとベルギーGPには直接現場に行って、彼の走りや走行データ、他の選手との比較を見ました」

角田は2018年にレッドブル・ジュニア(レッドブルが育成する若手ドライバー)のハンガロリンクのテストに参加、そのテストで当時レッドブル・ジュニアのエースドライバーでもっともF1に近いと言われていたダニエル・ティクトゥムとトップタイムを競い合い、最終的に角田が上回ったことでレッドブルのスタッフたちを驚かせたという逸話を持つ。その時のパフォーマンスが、翌年からのレッドブル・ジュニアに加入する大きな要因となった。

「僕が現地に行ったときもデータを見るだけでなく、本人とも話して、チーム監督やエンジニア、メカニック、そしてヘルムート(・マルコ/レッドブルのモータースポーツアドバイザー)とも話して、角田に対してのノーレッジ(知識)というか『こういうドライバーなんだな』と把握したのは、その時が初めてですね」

その2019年5月、中野信治氏は角田のドライバーとしてのパフォーマンスの高さに、今後の可能性をすぐに感じることになった。

「F4のときから速いということは聞いていたのですが、具体的にどういう走らせ方、戦い方をしているかは見たことがなかった。2019年にステップアップしたFIA-F3のとき、角田はレッドブル・ジュニアの一員でしたが、当時のチーム、イェンツァー・モータースポーツは下位チームだったので結果が出なくて苦しんでいました。それでも走行データを見せてもらったら、見た瞬間に『うまいな』と分かるブレーキの踏み方と抜き方、ハンドルの切り方をしていました」

「僕も何十年といろいろなドライバーの走行データを見てきて、やはりうまいドライバーの走らせ方、特徴というのがある。クルマの限界を見極めたり、引き出したりするのが早い走らせ方というのがあって、角田はその典型例でしたね。そのときのタイムはそれほど速くなかったけれど、データを見て『こんな結果で終わるようなドライバーじゃないな』と見た瞬間に分かりましたし、速いクルマに乗せたら絶対に速く走れるドライバーだというのはすぐに分かりました」

中野信治が語る角田裕毅の魅力Photo AlphaTauri

レーシングドライバーとしての特徴は、角田の人間的な性格面が走り方に現れているという。

「彼はとにかく、いろいろな物事に対して物怖じをしないんですよね。日本的だと遠慮をしたり、ちょっと様子を見たりしがちで、慣れるまで時間が掛かってしまうのですが、角田はすぐに溶け込んでいくというか、あまり他人にバリアを張らない性格です。ヨーロッパにおいては『これくらいが普通でしょ』というような良い意味での図々しさを持っています。それはこの世界で成功するためにすごく重要な要素です。言葉を覚えることも、海外での仕事の仕方を覚えるのもそうだし、角田はいろいろな意味で溶け込んでいくスピード、吸収していくスピードが早かったですね」

新しい海外での生活に日本とは違う仕事場、そこに素早く溶け込んでいくスピード、そして物怖じしない角田の性格は走りにも現れている。

「まさにそうですね、角田はとにかくクルマの限界を引き出すのが早い。本当に乗った瞬間からクルマの限界を引き出します。それがよく分かったのが2020年にステップアップしたFIA-F2でした。角田は初日の走り始めから、必ずと言っていいほどトップタイムを出してきます。予選で負けたとしても、週末のセッション走り始めから速いというのが彼の典型的な特徴です」

「クルマの限界を引き出して、見極めるのがとにかく早いんですよね。そこから先にクルマのセットアップを煮詰めていく能力やチームとのコミュニケーションの仕方というのは、まだまだ学んでいかないといけないところだとは思います。でも彼にはそういった、ちょっと特殊というか日本人離れした能力があります。これまでの日本人ドライバーには少なかった、そういう力を角田は持っていますよね」

その物怖じしない性格と乗り始めの速さ持ちながら、角田はFIA-F2に参戦していた2020年、さらに大きな成長をみせたと中野氏は話す。

「昨年はF1に行くという明確な目標がありましたし、途中、そこに向けて焦っている風にも見えた時もありましたが、きちんと切り替えて、最後はまとめてきました。最後の2戦は本当に見事でタイヤマネジメントもオーバーテイクもうまかった。あの戦い方はヘルムートを含め、レッドブルの首脳陣を納得させるには十分な走りでした。この1年でかなり成長したと思いますね」

「ヘルムートに『角田のどこが良いか』という話をしたとき、『角田は予選で後ろにいても、とにかく決勝で上がってくるんだよ。前のクルマを追い抜いてくる。それが好きなんだ!』ということをF3のときから評価していました。たしかにヘルムートは“戦うドライバー”が好きなんですよね。マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)もまさにそうです」

中野信治が語る角田裕毅の魅力Photo AlphaTauri

FIA-F2で実績だけでなく心身ともに成長を見せた角田は今年、ついにF1デビューを飾ることになった。F1のファーストシーズンを迎えるに当たって、角田はどのような課題と向き合うことになるのだろう。

「いくら角田と言えども、F1の1年目は簡単ではないと思います。今までのカテゴリーとは訳が違いますし、チームメイトのピエール・ガスリーは強力なドライバーです。ただ、一緒に戦うガスリーは、チームメイトとして僕は良いドライバーだと思います。ガスリーのドライビングスタイルは、どちらかというと角田に似ているのかなという気もします」

角田が所属するアルファタウリ・ホンダは、かつての前身は1998年に中野氏が所属していたミナルディ。現在もファクトリーは同じ場所にあり、当時のファミリー感の強いチームカラーは現在も引き継がれている。そのアルファタウリのチームカラーは角田にポジティブな要因だと中野氏は話す。

「アルファタウリ・ホンダは僕もよく知っている元ミナルディチームで、多くのメカニックは当時から変わっていますが空気感は変わっていませんでした。チーム代表のフランツ・トストのおかげでもありますが、角田にとってはかなり仕事がしやすい環境だと思います」

「1年目に行くチームとしては、ここ以上の環境はないというくらいに僕は思っています。そして、そのチームで本当にやるべきことは、ガスリーに対してどの位置で戦うことができるか、ということだと思います。そして、追いつくのではなくて勝たなきゃダメです。今シーズンでHondaがレッドブル、そしてアルファタウリから離れるということを考えると、角田は今年ガスリーを倒しにいかないと、2022年以降のチャンスがあるかわかりません。Hondaのサポートがなくてもレッドブルに昇格できるようなパフォーマンスを見せないといけない。そんな角田の走りに期待して、今年もF1を見て楽しんでいきたいと思います」

角田裕毅の、まさに勝負を懸けた1年が始まろうとしている。

中野信治が語る角田裕毅の魅力Photo AlphaTauri

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