F1

Hondaの終わりなき挑戦③

1000回目のグランプリとなった2019 F1第3戦 中国GPを制したルイス・ハミルトン

1000回目のグランプリとなった2019 F1第3戦 中国GPを制したルイス・ハミルトン

2019年の第3戦中国GPは、F1の歴史に新たな1ページを加えるグランプリとなった。1950年にイギリスのシルバーストンで初めてF1グランプリが開催されてから、今回が記念すべき通算1000回目のレースとなったからだ。

そのF1にホンダが初めて参戦したのは、1964年。日本ではちょうど東京オリンピックが開催されていたこともあり、F1への関心はまだ低かった。4年後にホンダは、F1参戦当初の「4輪車の技術習得」という目標が達成できたとの判断から、1968年限りでF1から撤退することを決定した。

そのホンダが再びF1への挑戦を開始したのは、1983年。
「レースはホンダの企業文化。勝ち負けではなく、ホンダ車に乗っていただいているお客さまに、最高の技術をお見せするため、そして楽しんでいただくため、レース活動を再開します」(河島喜好社長)というのが理由だった。83年から始まったホンダにおける第二期F1活動は、のちにマクラーレンとの黄金時代にスポットライトが向けられがちだが、ホンダは「日本人にF1レースをもっと知ってもらいたい、もっと興味を持ってもらいたい」という目標を掲げ、エンジンの開発以外にもさまざまな挑戦を行なった。

鈴鹿サーキットでのF1初開催となった1987年のF1日本グランプリ 決勝レースに向けてコースインしていくマシンたち。この後1990年前後にかけて日本では大きなF1ブームが巻き起こった

鈴鹿サーキットでのF1初開催となった1987年のF1日本グランプリ 決勝レースに向けてコースインしていくマシンたち。この後1990年前後にかけて日本では大きなF1ブームが巻き起こった

そのひとつが、1987年に日本GPを鈴鹿サーキットに誘致することであり、日本人ドライバーとして中嶋悟をF1にデビューさせることだった。時を同じくして、日本でF1が全戦テレビ中継されたこともあって、日本でのモータースポーツ文化は急激に栄えることとなった。

現在、ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治が、ホンダでF1活動に従事するようになったのも、ちょうどこのころだった。

1990年 F1日本グランプリ、ピットアウトしていくゲルハルト・ベルガー。このマシンの担当エンジニアが、現在Honda F1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治だった。

1990年 F1日本グランプリ、ピットアウトしていくゲルハルト・ベルガー。このマシンの担当エンジニアが、現在Honda F1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治だった。

小さな頃から自動車に興味があった田辺が本田技術研究所に入社したのは1984年。この年、ウイリアムズにエンジンを供給していたホンダは、68年以来16年ぶりとなるF1での3勝目を挙げた。上司に「F1をやらせてください」と懇願した田辺が、F1の部署に配置されたのはそれから2年後の86年だった。そして、90年にゲルハルト・ベルガー担当エンジニアに抜擢され、マクラーレン・ホンダの黄金時代を支えた。日本でのF1人気向上に一役買った。

その後、ホンダは第3期(2000〜2008年)を経て、2014年からスタートした新しいパワーユニット(PU)時代に、2015年から参加。記念すべき1000回目のF1グランプリとなった中国GPでは、ホンダ製PUを搭載する4台のうち3台が入賞し、記念のグランプリを盛り上げた。

2019年 F1第3戦 中国GPでマックス・フェルスタッペンは4位、ピエール・ガスリーは6位。ピエール・ガスリーはファステストラップを記録し追加で1ポイントを獲得した。またアレクサンダー・アルボンはピットスタートから追い上げて10位となりポイントを獲得している

2019年 F1第3戦 中国GPでマックス・フェルスタッペンは4位、ピエール・ガスリーは6位。ピエール・ガスリーはファステストラップを記録し追加で1ポイントを獲得した。またアレクサンダー・アルボンはピットスタートから追い上げて10位となりポイントを獲得している

いつの日か、現在のホンダの活躍を見ているファンの中から、田辺TDのようなエンジニアが現れることを願いたい。

ドライバーポイント(第3戦終了時点)

順位 ドライバー チーム ポイント
1 ルイス・ハミルトン メルセデス・AMG・ペトロナス・モータースポーツ 68
2 バルテリ・ボッタス メルセデス・AMG・ペトロナス・モータースポーツ 62
3 マックス・フェルスタッペン アストン・マーティン・レッドブル・レーシング 39
4 セバスチャン・ベッテル スクーデリア・フェラーリ・ミッション・ウィノウ 37
5 シャルル・ルクレール スクーデリア・フェラーリ・ミッション・ウィノウ 36
6 ピエール・ガスリー アストン・マーティン・レッドブル・レーシング 13
7 キミ・ライコネン アルファロメオ・レーシング 12
8 ランド・ノリス マクラーレンF1チーム 8
9 ケビン・マグヌッセン リッチエナジー・ハースF1チーム 8
10 ニコ・ヒュルケンベルグ ルノーF1チーム 6
11 ダニエル・リカルド ルノーF1チーム 6
12 セルジオ・ペレス レーシングポイント 5
13 アレクサンダー・アルボン レッドブル・トロロッソ・ホンダ 3
14 ランス・ストロール レーシングポイント 2
15 ダニール・クビアト レッドブル・トロロッソ・ホンダ 1
16 アントニオ・ジョヴィナッツィ アルファロメオ・レーシング 0
17 ロマン・グロージャン リッチエナジー・ハースF1チーム 0
18 カルロス・サインツJr. マクラーレンF1チーム 0
19 ジョージ・ラッセル ウイリアムズ・レーシング 0
20 ロバート・クビサ ウイリアムズ・レーシング 0

コンストラクターポイント(第3戦終了時点)

順位 チーム ポイント
1 メルセデス・AMG・ペトロナス・モータースポーツ 130
2 スクーデリア・フェラーリ・ミッション・ウィノウ 73
3 アストン・マーティン・レッドブル・レーシング 52
4 ルノーF1チーム 12
5 アルファロメオ・レーシング 12
6 リッチエナジー・ハースF1チーム 8
7 マクラーレンF1チーム 8
8 レーシングポイント 7
9 レッドブル・トロロッソ・ホンダ 4
10 ウイリアムズ・レーシング 0

Hondaの終わりなき挑戦②

ナイトレースとして開催されるバーレーンGPの舞台、サヒールにあるバーレーン・インターナショナルサーキット。

ナイトレースとして開催されるバーレーンGPの舞台、サヒールにあるバーレーン・インターナショナルサーキット。

バーレーンGPは、Hondaにとってさまざまな思いが交錯するグランプリだ。
2年前の2017年は、パワーユニットのコンポーネントのひとつであるMGU-H(熱エネルギー回生システム)が相次いでトラブルに見舞われた。1台はスタートすることすらできずにレースを終え、もう1台もリタイアという辛酸を舐めた。

2018年、予想を大きく超える4位でフィニッシュしたピエール・ガスリー。2019年の走りにも期待が高まる

2018年、予想を大きく超える4位でフィニッシュしたピエール・ガスリー。2019年の走りにも期待が高まる

昨年は、ピエール・ガスリーが、2015年にF1に復帰して以降、最高位となる4位を獲得し、レース後のトロロッソ・ホンダのガレージは歓喜に包まれた。
そして、2019年のバーレーンGPはHondaのF1史に、またひとつ大きな足跡を刻むレースとなった。

セットアップが決まらず苦労しながらも表彰台まであと一歩の所まで走り抜いたマックス・フェルスタッペン

セットアップが決まらず苦労しながらも表彰台まであと一歩の所まで走り抜いたマックス・フェルスタッペン

予選5番手から決勝レースをスタートしたマックス・フェルスタッペンは、堅実な走りでポジションをキープ。2回目のピットストップ後にフェラーリのセバスチャン・ベッテルがフロントウイングを破損して緊急ピットインしたのにともない、4番手に浮上した。レース終盤にはMGU-Hにトラブルを抱えてペースダウンしていたフェラーリのシャルル・ルクレールに3秒差まで猛追する。
残念ながら、残り2周で他車のアクシデントで出されたセーフティーカーによって逆転はならず、Hondaは開幕戦に続く表彰台を獲得することはできなかった。

しかし、バーレーンGPのHondaの戦いは、これで終わりではなかった。フェルスタッペンがチェッカーフラッグを受けた22秒後にチェッカーフラッグを受けたのが、今年トロロッソからレッドブルに移籍したガスリーだった。8位でフィニッシュしたガスリーにとって、レッドブル・ホンダでのうれしい初ポイントだった。
「今週末はマシンのセットアップに苦しんだけど、レースではいくらかマシンの感触に改善が見られ、ポイントを獲得してレースを終えることができた。次の中国GPではさらに力強さを見せられるよう、できる限りのことをして準備をしていきたい」(ガスリー)

第二戦で初入賞を果たしたアレクサンダー・アルボン。ルーキーとは思えない堅実な走りで開幕戦に続きしっかりとアピールした

第二戦で初入賞を果たしたアレクサンダー・アルボン。ルーキーとは思えない堅実な走りで開幕戦に続きしっかりとアピールした

その4秒後、今度は今年トロロッソ・ホンダからF1にデビューしたアレクサンダー・アルボンが9位でチェッカーフラッグを受けた。新人のアルボンにとっては、これがF1初入賞となった。
「風のせいでマシンの挙動を予想するのが難しい状況だったけど、いい走りを披露することができたと思う。たくさんの経験を積み、そのうえでF1で初めてのポイントを獲得でき、とてもうれしい」(アルボン)

4台全てが完走を果たしたHonda PU陣営。2戦目のバーレーンGPを終えてもPUに大きなトラブルは無く、信頼性が大きく高まっていることがうかがえる

4台全てが完走を果たしたHonda PU陣営。2戦目のバーレーンGPを終えてもPUに大きなトラブルは無く、信頼性が大きく高まっていることがうかがえる

Honda勢3台が同じレースで入賞するのは、1991年第15戦日本GP以来、28年ぶりの快挙。Hondaの田辺豊治F1テクニカルディレクターも「今日はタフなレースだったが、4台とも完走を果たし、そのうち3台がポイント獲得することができた。パワーユニットとしては週末を通してトラブルフリーで走り抜き、それがこの結果につながったと感じている」と信頼性とともに性能向上を評価していた。

ドライバーポイント(第2戦終了時点)

順位 ドライバー チーム ポイント
1 バルテリ・ボッタス メルセデス・AMG・ペトロナス・モータースポーツ 44
2 ルイス・ハミルトン メルセデス・AMG・ペトロナス・モータースポーツ 43
3 マックス・フェルスタッペン アストン・マーティン・レッドブル・レーシング 27
4 シャルル・ルクレール スクーデリア・フェラーリ・ミッション・ウィノウ 26
5 セバスチャン・ベッテル スクーデリア・フェラーリ・ミッション・ウィノウ 22
6 キミ・ライコネン アルファロメオ・レーシング 10
7 ランド・ノリス マクラーレンF1チーム 8
8 ケビン・マグヌッセン リッチエナジー・ハースF1チーム 8
9 ニコ・ヒュルケンベルグ ルノーF1チーム 6
10 ピエール・ガスリー アストン・マーティン・レッドブル・レーシング 4
11 ランス・ストロール レーシングポイント 2
12 アレクサンダー・アルボン レッドブル・トロロッソ・ホンダ 2
13 ダニール・クビアト レッドブル・トロロッソ・ホンダ 1
14 セルジオ・ペレス レーシングポイント 1
15 アントニオ・ジョヴィナッツィ アルファロメオ・レーシング 0
16 ジョージ・ラッセル ウイリアムズ・レーシング 0
17 ロバート・クビサ ウイリアムズ・レーシング 0
18 ダニエル・リカルド ルノーF1チーム 0
19 カルロス・サインツJr. マクラーレンF1チーム 0
20 ロマン・グロージャン リッチエナジー・ハースF1チーム 0

コンストラクターポイント(第2戦終了時点)

順位 チーム ポイント
1 メルセデス・AMG・ペトロナス・モータースポーツ 87
2 スクーデリア・フェラーリ・ミッション・ウィノウ 48
3 アストン・マーティン・レッドブル・レーシング 31
4 アルファロメオ・レーシング 10
5 マクラーレンF1チーム 8
6 リッチエナジー・ハースF1チーム 8
7 ルノーF1チーム 6
8 レッドブル・トロロッソ・ホンダ 3
9 レーシングポイント 3
10 ウイリアムズ・レーシング 0

Hondaの終わりなき挑戦①

2019年F1開幕戦オーストラリアGP表彰式。マックス・フェルスタッペンが3位となり、Hondaに11年ぶりの表彰台をもたらした

2019年F1開幕戦オーストラリアGP表彰式。マックス・フェルスタッペンが3位となり、Hondaに11年ぶりの表彰台をもたらした

2019年、Honda F1の新たな挑戦は、11年ぶりの表彰台という形で幕を開けた。2008年のイギリスGP以来の表彰台を獲得したのは、今年からHondaのパワーユニットを搭載したレッドブルを駆るマックス・フェルスタッペン。レッドブルは2010年から4連覇を成し遂げた強豪で、昨年も4勝を挙げ、メルセデス、フェラーリとともにトップ3チームの一角を担っている。

開幕戦オーストラリアGPでは、予選でフェルスタッペンが4位を獲得。レースでは、中盤にフェラーリのセバスチャン・ベッテルをオーバーテイクして3番手に浮上すると、終盤は昨年のチャンピオンのメルセデスのルイス・ハミルトンにプレッシャーをかける力強い走りを披露して、3位表彰台を獲得した。

セバスチャン・ベッテルとマックス・フェルスタッペンの開幕戦バトルシーン。このあとストレートでの伸びを活かしフェルスタッペンが見事オーバーテイクを決めた

セバスチャン・ベッテルとマックス・フェルスタッペンの開幕戦バトルシーン。このあとストレートでの伸びを活かしフェルスタッペンが見事オーバーテイクを決めた

Hondaの山本雅史モータースポーツ部長は「レッドブルは本当に素晴らしいチーム。レースの組み立て方が完璧でした。その戦略とおりに走ることができるマックスも素晴らしかった。フェラーリを抜いたときはしびれました」とパートナーを称えた。

レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も「Hondaは冬の間に素晴らしい仕事をし、メルセデスとフェラーリとのギャップを縮めるための強力なパワーユニットを準備してくれた」と、Hondaに感謝した。

レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も開幕戦の結果に手ごたえを感じたようだ。今後の更なるシャシー、パワーユニットの進化でメルセデス、フェラーリとのがっぷり四つの戦いに期待が膨らむ

レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も開幕戦の結果に手ごたえを感じたようだ。今後の更なるシャシー、パワーユニットの進化でメルセデス、フェラーリとのがっぷり四つの戦いに期待が膨らむ

さらにレッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは「Hondaのパワーユニットに関しては、期待しているパワーはもらっている。もちろん、パワーはいくらあっても不要にはならないから、さらにパワフルなPUを供給されればそれに越したことはないが、現時点でのメルセデスとの差はシャシー(車体)。課題はわれわれの方にある。しかし、目標を変えるつもりはない。今年は5勝する」と勝利を約束した。

開幕戦で3位表彰台を勝ち取ったレッドブルレーシングのエース、マックス・フェルスタッペン。その見つめる先にあるのは、もちろん表彰台の中央だ。

開幕戦で3位表彰台を勝ち取ったレッドブルレーシングのエース、マックス・フェルスタッペン。その見つめる先にあるのは、もちろん表彰台の中央だ。

Hondaの頂点を目指した挑戦は、2019年の開幕戦で表彰台獲得という形で絶好のスタートを切った。さらなる高みを目指した今後の戦いに期待したい。

尾張正博

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