F1

真紅の跳ね馬復活のキー、「シャルル・ルクレール」

ベルギーGP、イタリアGPと2連勝。今シーズン後半戦、そして来季以降のF1の勢力図を見ていく上でもキーとなるドライバー、それがシャルル・ルクレールだ

ベルギーGP、イタリアGPと2連勝。今シーズン後半戦、そして来季以降のF1の勢力図を見ていく上でもキーとなるドライバー、それがシャルル・ルクレールだ

2019年F1シーズン後半戦突入から、ベルギー&イタリアGPと2連勝したフェラーリのシャルル・ルクレール。フェラーリの優勝はシーズン初、そして実に昨年アメリカGP以来15戦ぶりのことである。この久しぶりの勝利を挙げたのが、F1シーズン2年目の若手だったのは衝撃的だった。フェラーリの将来を担うルクレールとはどんなドライバーなのか?そのキャリアから浮き彫りにしてみたい。

父もF3レーサーだったシャルル。ジュール・ビアンキの父が経営するカート場で4歳からレース人生をスタートさせた

父もF3レーサーだったシャルル。ジュール・ビアンキの父が経営するカート場で4歳からレース人生をスタートさせた

1980年代から90年代にF3で活躍したキャリアを持つエルベ・ルクレールの3人息子の次男として生まれたシャルル・ルクレール。国籍はモナコ公国だが、父エルベはレーサー引退後はレーシングカート場の管理人に勤めるなど、レースの世界に近いながらも決して金銭的に恵まれた環境ではなかったという。親交のあった故ジュール・ビアンキの父親フィリップの経営するカート場で4歳で初めてカートを体験し、ルクレールは以後父とフィリップの指導でカートキャリアを積んでいく。もちろん、ジュール・ビアンキは先輩として一緒に切磋琢磨する仲だった。

2018年、パドックで幼馴染の一人であるピエール・ガスリーと談笑するシャルル。他にもオコン、アルボン、ラッセルなどカート時代からのライバルが多数F1までステップアップしている

2018年、パドックで幼馴染の一人であるピエール・ガスリーと談笑するシャルル。他にもオコン、アルボン、ラッセルなどカート時代からのライバルが多数F1までステップアップしている

そして8歳からカートレースに参加。この頃にピエール・ガスリーやエステバン・オコン、そして先日のFIA F2で不幸に遭ったアントワーヌ・ユベールと知り合う。その初年度2005年から「フランス・PACA選手権」でチャンピオンとなり、同タイトルを06&08年も獲得。09年フランス選手権、10年モナコ・カート・カップで最年少優勝と頭角を現す。
しかし10年で活動資金がほぼ底をつき、キャリアをあきらめようとしていたところでビアンキが当時所属していたARTグランプリのオーナーだったニコラス・トッドを紹介。トッド主宰の「オールロード・マネージメント」に所属し、活動を継続する。数々のビッグレースや選手権タイトルを獲得するなか、15年のCIK-FIA世界選手権のKZクラスではマックス・フェルスタッペンと競い合い、王者フェルスタッペンに次ぐ選手権2位を獲得している。
カートで目覚ましい活躍を見せたルクレールがシングルシーターにステップアップしたのは14年。フォーミュラ・ルノー2.0アルプスシリーズに参戦し、選手権2位。同ジュニアチャンピオンシップではタイトルを獲得した。この頃、ジョージ・ラッセルも同選手権に挑戦しており、ルクレールがスポット参戦したユーロカップではアレクサンダー・アルボン、ユベールも戦っていた。3度挑戦したユーロカップでも2位を2回得るなどキャリアは順風満帆だったルクレールだが、この年の日本GPでジュール・ビアンキが重傷を負うという悲報を受ける。

2017年にはF2チャンピオン、2018年はF1に昇格しザウバーへ。そして2019年、異例とも言える早さでフェラーリのシートを手に入れる

2017年にはF2チャンピオン、2018年はF1に昇格しザウバーへ。そして2019年、異例とも言える早さでフェラーリのシートを手に入れる

翌15年はF3にステップアップし、ヨーロッパF3選手権でランキング4位。16年にフェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)に抜擢され、フェラーリとハースの開発ドライバーに。同年GP3選手権でチャンピオン。この時のFDAの同期はジュリアーノ・アレジ、所属チームARTグランプリのチームメイトはアルボン(選手権2位)だった。17年にはFIA F2にステップアップするとデビューシーズンながら優勝7回、ポールポジション8回という圧倒的な強さで王座を獲得。同年にリザーブドライバー契約をしていたザウバーのレギュラーシートを18年から射止めることとなった。そして19年は異例のフェラーリ抜擢、現在に至るというのがルクレールの輝かしいステップアップキャリアだ。

レーサーとして順調なキャリアを歩んでいるが、どこか憂いを帯びた表情が多いのは悲劇的なストーリーが付きまとうが故か

レーサーとして順調なキャリアを歩んでいるが、どこか憂いを帯びた表情が多いのは悲劇的なストーリーが付きまとうが故か

だが、その栄光の影に時に悲劇的なストーリーが付きまとうのも彼のキャリアの特異的なところだ。17年にはF2参戦中の5月に父エルベをがんで亡くしている。ルクレールはそれでも選手権を優先し、移動の飛行機内で乗り合わせた当時フェラーリ代表だったマウリツィオ・アリバベーネに「このレースに絶対勝ち、帰国したら父を埋葬する」と語ったという。実は病床の父には「フェラーリと契約した」と嘘をついており、ルクレールは何がなんでもF1にステップアップし、フェラーリに入らなければならない事情があったのだ。また彼のフェラーリ抜擢は17年に急逝したフェラーリ会長のセルジオ・マルキオンネの遺志でもあり、彼のフェラーリドライバーとしてのプライドは、父エルベとマルキオンネ会長の思いが基盤となっていることは間違いない。

シャルルのF1初優勝も、世界が悲しみにくれたアクシデントの直後だった。彼はその優勝を幼い頃から共に走ってきた天国のアントワーヌ・ユベールに捧げた

シャルルのF1初優勝も、世界が悲しみにくれたアクシデントの直後だった。彼はその優勝を幼い頃から共に走ってきた天国のアントワーヌ・ユベールに捧げた

父エルベ、レースの世界で恩になった幼馴染であり先輩のビアンキ、フェラーリへの道を開いてくれたマルキオンネ。大事な人たちの遺志を継いでF1での戴冠を目指すルクレールは、勝利に対する覚悟が違う。先日は、長くステップアップカテゴリーで一緒に戦ってきた友人のユベールも亡くしてしまった。その翌日にポール・トゥ・ウインでF1初優勝を果たしたルクレールは、ウイニングランを終えてマシンから立ち上がるや天を仰ぎ、ユベールにこの勝利を捧げていた。

2019年F1第9戦、オーストリアGPでは優勝したマックス・フェルスタッペンと激しい優勝争いを繰り広げたシャルル。今後もこの二人はバチバチのライバル関係となっていくはずだ

2019年F1第9戦、オーストリアGPでは優勝したマックス・フェルスタッペンと激しい優勝争いを繰り広げたシャルル。今後もこの二人はバチバチのライバル関係となっていくはずだ

前半戦圧倒的な強さを見せたメルセデスの牙城を崩したフェラーリのシャルル・ルクレール、そしてレッドブルのマックス・フェルスタッペン。性格も走りのスタイルも違うが、特にこの若き2人のトップドライバーは今後もライバルとして激しいバトルを見せてくれるはずだ。差し当たり、鈴鹿サーキットで行われる日本グランプリでこの2人がどんな走りを見せてくれるのか、期待は高まるばかりだ。

特集:マックス・フェルスタッペン

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