Kawasaki Racing Teamインタビュー

やり残したことを仕上げに2連覇を目指していきます!

26年ぶりの優勝をとげたKRTが参戦表明!Kawasaki Racing Team インタビュー

川崎重工業株式会社 モーターサイクル&エンジンカンパニー プレジデント 堀内勇二 × チュートリアル 福田充徳さん
 

優勝決定の瞬間 私は帰りの車中でした

2019年鈴鹿8時間耐久ロードレースは、カワサキの26年ぶり2度目の優勝で幕を閉じました。2001年以来18年ぶりにKRT(=カワサキレーシングチーム)という、文字通りカワサキのワークスチームで参戦し、そのワークス体制復活の初年度で、見事に優勝を飾ったのです。

「カワサキとして、鈴鹿8耐を勝ちに行こう、と号令をかけて、その初年度で勝てたことはホッとしましたね。ただ、その勝ち方が少しスッキリしなかったのがもったいなかった、と思っています」
そう語るのは、Kawasaki=川崎重工のモーターサイクル&エンジンカンパニーのプレジデントである堀内勇二さん。Kawasakiオートバイ部門のトップの方である。
 
――1年越しになりますが、カワサキ26年ぶりの優勝、おめでとうございます。それにしても、19年の8耐はドラマにあふれていましたよね!すごい面白かった!
 そうインタビューをしてくれるのは、昨年に続いて堀内さんにお話を聞いていただいた、チュートリアルの福田充徳さん。あらためて説明するまでもありませんが、福田さんはご自身でもレース参戦経験を持つオートバイ好き。「バイク芸人」としてもおなじみで、鈴鹿8耐に関しても、もう30年もの観戦歴を持つ筋金入りのファンです。

「19年の大会は、ファンの方々にとっては本当に面白いレースだったと思います。ピットタイミングで順位が変わって、最後の最後までトップ3が僅差でしたからね。そんなレースで、カワサキは優勝こそできましたが、終わりがすっきりしませんでしたからね。そこが少しモヤモヤしています」(堀内さん 以下同)


――あの瞬間、堀内さんはどうされていたんですか?(福田さん 以下同)

「あの瞬間」とは、19年の鈴鹿8耐のフィナーレシーンのこと。トップを独走していたKRTのジョナサン・レイ選手が、チェッカーフラッグを受ける、まさにその周に転倒。レースは赤旗中断の後に成立となり、一時はチェッカーを受けられなかったKRTでなく、ヤマハファクトリーレーシングチームが優勝、という裁定が下ったのでした。
 
「あの瞬間、あと半周というところでジョナサンが転倒して、一時はヤマハさんが優勝、と仮表彰式が進みましたよね。私はそれまではピットにいたのですが、何が何だか分からないうちに、ダメやったのかぁ、と帰り支度して、帰ってしまっていたんです。車中でスタッフから『裁定が覆った、ウチが優勝になりました』と電話連絡を受けたのです」

――ではジョナサン・レイ選手の転倒は現地で。
「現場で見ていました。もう少しでスタッフ全員で大喜びできる、ピットのメカニックやスタッフ、ライダーにお疲れさん、よかったな、やったな、って言えるところだったのですが、あの瞬間はもう混乱してしまっていて・・・。ジョナサンなんか、チーム全員で数か月も積み上げてきたものを壊してしまった、って泣いていましたからね。それから裁定まで時間がかかりましたから」

――では、判定が覆った時には鈴鹿にいらっしゃらなかった?
「はい、帰りの新名神高速道路の、どこかトンネルを走っていて、私が運転していたのですが、助手席のスタッフが電話連絡を受けた状況でした。何がなんだかわからないけど、覆ったと聞きました。ただ、優勝したのか?と半信半疑で、自宅に帰って家族にも『どうやら優勝したみたいやぞ』って伝えました」

 レースは仮表彰式を済ませた数時間後に、裁定が覆り、一転、KRTの優勝とされました。ただし、鈴鹿8耐は出場車のレース後車検が翌日に行なわれるため、正式結果となるのは例年、翌日の月曜になります。19年大会は、月曜の16時過ぎに正式結果となって発表されたのでした。
 
「レース翌日の月曜は、私は東京で全体会議がありまして、そこに出席していたんです。前夜のうちに、カワサキが優勝と報告を受けていましたが、正式結果が出る夕方まで、何度も電話連絡していたのを覚えていますね」

――そこで正式に優勝、ということになったんですね。会議をされていたメンバーの皆さんとか、どんな反応だったんですか?
「19年大会もサーキットに来てくれていた、川崎重工の金花芳則社長をはじめ、みんなから祝福の言葉をもらいましたね。金花社長は、17年から8耐決勝に鈴鹿まで来てくれるようになって、3年目でやっと優勝の報告ができました」

――カワサキファンの反応もすごかった。カワサキのSNSにすごいアクセスが来たと聞いたことがあります。
「鈴鹿8耐は7月末で、"Kawasaki Racing"というレース関係の当社Facebookページは、その月間アクセス数が過去最高だったと聞いています。みなさん、待ってくれていたんですね。実際、会場でもたくさんのファンの皆さんに声援をいただいて、本当にありがたいなぁ、と思いました」

 "Kawasaki Racing"のページは、いいね!数やクリック数、新規フォロー数が過去最高。過去実績の4倍を記録する数字もありました。

――堀内さん、あの優勝から時間が経って、どういったお気持ちでしたか。
「もちろん優勝はうれしいのですが、なんかモヤモヤ、すっきりしないなぁ、と思っていますね(笑)。だから、今年の2020年大会でやるべきことは、去年の大会でやり残したことをやる、と。優勝はもちろん、スッキリ優勝を決めて、チーム全員で鈴鹿サーキットで大喜びしたいです。一種のリベンジですね」

――リベンジって、優勝してるんですよ?(笑)
「それくらいスッキリしていないってことです(笑)」
 

世界を駆け巡った カワサキ8耐優勝の大ニュース

そして2020年大会、KRTは再び鈴鹿8耐参戦を発表しました。昨年同様、世界スーパーバイク選手権(=WSBK)に参戦しているKRTをベースに参戦。2連覇を狙うことになります。

――ライダー体制は決まっているんですか?
「WSBK5連覇のジョナサン・レイと、2020年シーズンから新しくWSBKのKRTに加入したアレックス・ロウズ、それに3人目のライダーとしてWSBKにカワサキサテライトチームから参戦しているシャビ・フォレスをラインアップします」
 
ジョナサン・レイ選手

ジョナサン・レイ選手

アレックス・ロウズ選手

アレックス・ロウズ選手

シャビ・フォレス選手

シャビ・フォレス選手

――昨年の優勝メンバーはWSBKではチームが分かれてしまいましたからね。
「そうですね、レオン・ハスラム選手はホンダさんへ、トプラック・ラズガットリオグル選手はヤマハさんへ。もう、みんな手の内がわかってしまったというか、その意味でも今年は新しい挑戦になりますね」

――実際に鈴鹿8耐参戦を決めたのはいつ頃ですか?
「今年の1月頃ですね。19年大会は春ごろ決めて、4月頃に発表したんですが、今年はより入念な準備のために早めに決めて『しっかり準備していこう』と言っています」

――カワサキもワークスでの鈴鹿8耐参戦というのは大きな決断だったと思うんです。悪い言い方をすれば、19年大会に優勝したんだから、目標達成!と勝ち逃げする方法もあったんじゃないですか?
「我々としては、レースをもっと盛り上げたい、モータースポーツにもっと注目してもらいたいという思いがあり、カワサキの販売会社(注:カワサキモータースジャパン)からも日本のファンのためにぜひやりたい、という声が上がりましたからね」

――レース戦略は? もう決まってらっしゃるんですか?
「いえ、レースの戦略はチームに任せていて、私はなかなか教えてもらえないんです。昨年も、3人ライダー登録で2人で決勝レースを走りましたが、それも私は教えてもらえなくて(笑)。ただ、3人のライダーのうち、調子のいい、確実性のあるライダーふたりで走る、というカードを持つのは当然ですからね」
 
鈴鹿8耐の歴史の中で、26年ぶり2度目の優勝を遂げたカワサキですが、そのニュースは世界中を駆け巡ったようです。8耐優勝のニュースは、日本からイギリス、フランス、アメリカ、イタリアで大きな反響を呼び、タイや台湾、インドネシアなどの東南アジアにもビッグニュースとして伝わりました。

――鈴鹿8耐に勝ったことでNinja ZX-10RRがどんどん売れる、なんてことはなかったんですか?
「おかげさまで、Ninjaシリーズは大変よく売れています。8耐優勝はブランド価値向上に大きく貢献しています。一例ですが、カワサキ販売店で8耐優勝記念Tシャツを発売すると事前告知したら、お店のオープン前にお客様の列ができてすぐに完売になったと聞きました」

――鈴鹿8耐でカワサキが優勝したあと、僕もNinja ZX-10Rに乗りたくて我慢ならなくて、月刊オートバイ誌にお願いして試乗させてもらったんですよ!
「そうですか! どうでした?」

――それが、あのキツいレースに勝つってことは、よほど厳しい、誰でも乗れるようなバイクじゃないんだろうな、って勝手に思っていたんですが、すんなり乗れました! 雨上がりのウェット路面でツーリングに出かけたんですが、まったく苦もなくツーリングできましたよ!
「ありがとうございます。ジョナサンがよく「速いバイクは乗りやすい」って言うんですよね。Ninja ZX-10Rシリーズも、サーキット最速をコンセプトに開発した結果、速いだけでなく乗りやすいバイクになりました。2011年のモデルチェンジ以降、WSBKの成績も上向いて、それからWSBK5年連続チャンピオンも獲れましたしね。そして、乗りやすいからこそ多くの人に楽しんでもらえるんだと思います」
 

鈴鹿8耐制覇の勢いで 4気筒250ccスポーツバイクを発表!

鈴鹿8耐優勝で、あらためてレースの重要さを再認識したというカワサキ。それと直接関係があるわけではないのでしょうが、2020年には待望のニューモデルが発売されると言います。それが、久しくラインアップになかった、並列4気筒の250ccスーパースポーツバイク、Ninja ZX-25Rです。

――19年の東京モーターショーで見たんですが、とうとう4気筒の250ccを復活させるんですね!
「近年、またオートバイに若い人が戻って来てくれているという実感があるんです。私どもが2008年に発売した250ccのスポーツバイク、Ninja250Rがきっかけとなって250ccクラスが活性化して、今では若い人を中心に大きな市場に育ってきました。そこに4気筒エンジンモデルを投入するんです」

――250ccのスポーツバイクが2気筒モデルばかりの中、よく思い切りましたね。アイディアとしてはあったと思うんですが、実際に発売にGOサインを出したのがすごいと思います。
「4気筒モデルのアイディアはずっとありましたね。やってみようか、って意見が出ては消え、消えては出る、という繰り返しでした。4気筒モデルは、やはり排気ガス規制や音量の問題、それにコストの問題もありますから、なかなか高いハードルだったんですが、やってみよう、と」
 
――僕も昔のZXR250とか知っている世代なので、すごい楽しみなんです。早く乗りたい!
「私もカワサキに入社してすぐの頃、ああいう250ccの4気筒スポーツが社内で開発されていて、スゴいエンジン作ってるなぁ、と。私も楽しみです!実はね、開発しているZX-25R、わたしこっそり乗ったんですよ」

――え!ズルい!(笑) どんなだったんですか?
「あの頃のハイメカを現代の技術で作るというのは、わくわくしますからね。オートポリスサーキットだったんですが、乗ってみた感想は、あの頃の4気筒エンジンよりも、パワーカーブがフラットになっているなぁ、と。それと・・・」

――それと??
「ものすごいイイ音です!」

 カワサキは2019年シーズン、鈴鹿8耐優勝をはじめ、世界耐久(=EWC)でもフランスのSRCカワサキフランスがチャンピオンを獲得し、WSBKでは5連覇、併催レースであるワールドスーパースポーツ300(=WSS300)でもチャンピオンを獲得。鈴鹿8耐/EWC/WSBKとNinja ZX-10RRが見事3冠チャンピオンとなりました。

「昨年のこのインタビューで、福田さんが3冠チャンピオンという言葉を使ってくれたんですよね。あれはプレッシャーでした(笑)。もう、そんなくくりを作るなんてやめてくれよ、と言った覚えがありますもん」

――言いました! でもその通りになりましたね! 市販車最強、これはチャンピオンメーカーにだけ言える言葉です。僕なんか、ツーリングも好きですけど、やっぱりレースも大好き。そんななか、カワサキが3冠チャンピオンになって、うれしい気持ちがあるんです。さらにNinja ZX-25Rなんてスゴイバイク発売するんですもんね。
「Ninja ZX-25Rでは・・・これ言っていいのかな?・・・ワンメイクレースをやろうと思ってるんです。まだ計画中ですが、国内主要サーキットを舞台に、ワンメイクレースを企画したら面白そうだなって。Ninja ZX-25Rは、アジア選手権の日本ラウンドや鈴鹿8耐、それに全日本ロードレースの最終戦で、ファンのみなさんにお披露目したり、デモランをしたいと考えているんです。ここからまた、モータースポーツに興味を持ってくれる人が増えたらいいな、って考えなんです。Ninja ZX-25Rのワンメイクレースには、福田さんもぜひ参戦してください!」

――わ、出たいです!出たいです! レースを盛り上げるには、まずは鈴鹿8耐2連覇ですね!
「そうですね、19年大会は優勝できましたが、応援に来て頂いたファンの皆さんも私もサーキット場で勝利を祝うことはできなかった。20年大会は、サーキット場でファンの皆さん、チームのみんなと喜びを分かち合いたいですね!
カワサキは2020年の8耐をそういう大会にしたいと考えています」

――今年は帰りの車中で、なんて優勝報告じゃないことを願っています! 今日はありがとうございました!

<おわり>
 
「2019-2020 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース第43回大会」の開催中止について »

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