ロードレースと鈴鹿サーキット(1980年代)

平忠彦 1984年全日本第1戦鈴鹿BIG2&4 500ccクラス

 1978年7月、第1回鈴鹿8時間耐久ロードレース(以下、鈴鹿8耐)が開催され、モータースポーツ界を包んでいたオイルショックの重い空気に風穴を開ける。そして1980年代に入ると、オートバイレースは一気に活況へと移行していく。

 1982年に映画「汚れた英雄」(*1)が公開され、1983年には「バリバリ伝説」(*2)の連載がスタートし、オートバイレース人気に拍車をかけた。

 ライセンスでは、1979年に国際A級が新設。そして1981年から、全日本ロードレースに世界グランプリの最高峰クラスと同じ500ccクラスが新設された。

 国際A級500ccクラスの初代チャンピオンはYAMAHAの木下恵司が獲得。1982年はSUZUKIの水谷勝がチャンピオンとなり、そしていよいよ稀代のスーパースター平忠彦が台頭する。

 平は、映画「汚れた英雄」で、俳優・草刈正雄が演じる主人公・北野晶夫のレースシーンスタントを担当したことでも知られ、1983年から1985年まで、YAMAHAのファクトリーライダーとして全日本ロードレースの最高峰500ccクラスで3連覇を達成。かっこよくて速い平に誰もが憧れた。そして1986年から平は世界グランプリに挑戦し、世界でもその人気を高めていった。

 その平は、1985年の鈴鹿8耐に出場。パートナーは、世界グランプリで「キング」と呼ばれるスーパースターのケニー・ロバーツだった。ロバーツは1983年に現役を引退していたが、鈴鹿8耐ではそのブランクを感じさせないライディングでファンを魅了。レースで2人は独走したが、チェッカーまで残り約30分のところでマシンがストップするアクシデントが発生。平はこの後、1990年の鈴鹿8耐でライダーとして優勝するが、それ以前の戦いで『悲運のヒーロー』としても注目された。

 平の鈴鹿8耐挑戦をサポートしたのが資生堂Tech21だったが、2019年の鈴鹿8耐で、YAMAHA FACTORY RACING TEAMがそのマシンカラーリングを復刻させたのは記憶に新しい。

 また、1985年の全日本ロードレースでは、開幕戦の鈴鹿2&4レース、第6戦インターナショナル鈴鹿200km、日本グランプリに世界グランプリライダーのワイン・ガードナー(1986年にHondaワークスのロスマンズ・ホンダに加入)がスポット参戦。500ccとTT-F1の両クラスで圧勝した。また、日本グランプリには、この年の世界グランプリで、250ccクラスと500ccクラスでダブルタイトルを獲得したHondaのエース、ロスマンズ・ホンダのフレディ・スペンサーもエントリー。世界最高峰のパフォーマンスを日本のサーキットで観られるようになり、ファンのボルテージは上がっていった。

藤原儀彦 1988年全日本第1戦鈴鹿BIG2&4 500ccクラス

 平の世界挑戦により、全日本ロードレース500ccクラスでは新たな主導権争いが繰り広げられ、1986年は木下恵司がチャンピオンを獲得する。木下恵司は1984年にHondaに移籍しており、YAMAHAとHondaの両マシンでチャンピオンを獲得したことになる。そして平の後継者としてYAMAHAのエースとなった藤原儀彦が、1987年から全日本ロードレース500ccクラスで3連覇を達成し、平の連覇記録に並んだのである。

NR500_WGP_

 また、この1980年代は、Hondaにとって大きな転換期でもあった。2ストロークマシン全盛の世界グランプリに、Hondaは1979年に4ストロークV型エンジンのNR500で復帰。しかし、機密満載の先進テクノロジーマシンは、世界グランプリでは結果を残すには至らなかった。だが、1981年の鈴鹿2&4レースで、世界の片山敬済と、マシン開発に携わった木山賢悟が快走。この時は共に転倒してしまうが、後のインターナショナル鈴鹿200kmで、木山がポールtoウィンを達成して歓喜の渦に包まれたのである。

 このNR500は間もなく開発を終えるが、ここで得た数々のテクノロジーは、Hondaの後の2ストロークマシンNS500やNSR500に受け継がれていったのである。

1987年世界グランプリ第1戦日本・鈴鹿

 また、鈴鹿サーキットでも、1965年以来となる世界グランプリが1987年3月29日に復活。171,000人のファンが世界最高峰の速さに熱狂するなか、250ccクラスではHondaの小林大が優勝の快挙を遂げる。これを機に、日本人ライダーにとっては、世界グランプリが一気に身近な存在となり、1990年代の世界グランプリで巻き起こる日本人ライダー旋風へと繋がっていく。

*1 映画「汚れた英雄」 監督:角川春樹 原作:大藪春彦 脚本:丸山昇一 製作:角川春樹事務所/東映 配給:東映
*2 「バリバリ伝説」 著者:しげの秀一 掲載誌:週刊少年マガジン/講談社

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